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2018.07.19
中耳から内耳に音を伝えるアブミ骨という耳小骨が硬くなり、うまく動かなくなる病気です。主な症状は難聴と耳鳴りで、一般的に思春期以降、音を伝えることが難しくなる伝音難聴が両側の耳で徐々に進行し、40歳頃には自覚症状もはっきりしてきます。平均すると難聴の進行は1年に2~3dB程度で、60dB程度(中等度難聴)まで悪化しますが、難聴の程度は個人差が大きく、また左右の耳でも進行の度合いが異なることも多くみられます。
耳の断面図とアブミ骨の位置
明らかな原因はまだ分かっていませんが、「内耳とアブミ骨のあいだで発症する骨の病気」で、骨の異形成が耳硬化症の正体と考えられています。男性に比べて女性の罹患率が2倍以上であることが知られており、妊娠や出産を契機に難聴が進行することがあります。また、日本人は白人と比較して罹患率が低く、両側ではなく片側の耳だけ難聴になることも少なくありません。このことから、女性ホルモンの影響や遺伝的要因の関与も考えられています。
突発性難聴のように内耳(蝸牛=かぎゅう)そのものが障害される感音難聴と異なり、手術によって劇的な聴力改善が期待できます。耳硬化症では、アブミ骨がうまく動かなくなることで伝音難聴が生じるため、動きの悪くなったアブミ骨と新しいアブミ骨を取り替える手術(アブミ骨手術)を行ないます。成功率は80~90%程度と高く、積極的に手術が勧められます。
一方で、補聴器を使う効果も大きいため、難聴の程度や年齢、全身状態などに応じて手術を行なうかあるいは補聴器を使うかを医師と相談し、選択する必要があります。
耳硬化症は、難聴を自覚し耳鼻咽喉科を受診した際、純音聴力検査で伝音難聴を指摘されることで診断されます。中耳炎などの他の伝音難聴と鑑別することが必須となるため、CTによる画像検査なども行ないます。
耳硬化症に限らず、難聴を自覚した際は耳鼻咽喉科を受診し、聴力検査を受けてください。
骨の異形成が原因だと考えられていますが、明らかな原因はまだ分かっていません。そのため、現在のところ明確な予防方法はありません。「早期発見のポイント」で述べたとおり、難聴を自覚したら放置せずに耳鼻咽喉科で検査を受けましょう。
解説:岡本康秀
東京都済生会中央病院
耳鼻咽喉科
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