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2014.03.03
子どもの難聴は、生まれながらの難聴(先天性難聴)と、成長の過程で起こる難聴とに分けられます。
生まれながらの難聴の原因は遺伝、妊娠中の感染、早産、奇形などです。最近の研究では、半数以上が遺伝によるものと推定されています。ただ、両親とも難聴がない場合が9割近くであるように、難聴が起こるか起こらないかは、両親の遺伝子の組み合わせによって決まります。妊娠中に母親がウイルスや菌に感染して胎児が難聴となるケースは、風疹、トキソプラズマ、サイトメガロ、梅毒などが主な原因として知られています。また、奇形は、耳の穴(外耳)が完全に塞がっていたり、鼓膜の内側(中耳)の構造が変形していたり、音を感じる神経(内耳)が完成されなかったりして難聴が起こります。
成長の過程で起こる難聴の原因の代表は中耳炎です。中耳に膿がたまる急性中耳炎では、難聴は一時的です。一方、幼児期にかかることが多い、中耳に液体がたまる滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)では、難聴は軽度ですが、数年にわたって続く場合があります。痛みがないため気づくのが遅れ、言葉の発達に影響が出ます。ウイルスにより内耳に障害をきたすこともあります。ムンプス(おたふく風邪)による内耳障害は、数百人に1人みられるともいわれ、多くは片方の耳がほとんど聞こえなくなります。髄膜炎でも、内耳障害から難聴が起こることがあります。また、就学後には、心の問題によって起こる心因性の難聴への注意が必要です。
難聴は、以下の2つに分けられます。
伝音難聴:耳の穴から入ってきた音を振動として伝える経路(外耳、中耳)の異常による難聴
感音難聴:音を電気信号に置き換えて脳に送る部分(内耳)の異常による難聴
生まれながらに両耳が高度難聴になるのは、1000人に1~2人といわれています。日本では、2000年頃から新生児に対する聴覚スクリーニング検査が行なわれるようになりました。これは、専用の機器で音への反応を調べるという検査です。それにより難聴を早期発見し、対応するシステムが各地域で作られています。この時期に発見される難聴の多くは感音難聴で、薬や手術などでの改善は難しく、補聴器などで聴覚を補うことになります。外耳、中耳の奇形による伝音難聴は、手術で聴覚を取り戻せる場合があります。聴覚スクリーニングは任意の検査で、ほとんどの地域が自費での受診で行なわれています。ただ、実施していない施設もありますので、確認が必要です。
1歳半健診、3歳児健診、就学時健診などでは音への反応をみるとともに、言葉の発達の程度で難聴がないかどうかを判定しています。3歳児健診では、言葉の発達の遅れから、滲出性中耳炎が見つかることがあります。健診時以外でも言葉の発達に不安がある場合は、かかりつけの小児科、あるいは耳鼻咽喉科での相談が必要です。この時期の難聴は伝音難聴であることが多く、薬や手術で聴覚の改善が期待できます。例外はムンプス難聴で、有効な治療法はなく、残念ながら治らないといわれています。
難聴の時期やタイプにより対応はさまざまです。ここでは3つのケースを紹介します。
1 滲出性中耳炎
成長の過程で起こる難聴の多くは、滲出性中耳炎による伝音難聴で、感冒(かんぼう/くしゃみ、鼻水、発熱、倦怠感などの症状を示す急性の呼吸器疾患)を契機として起こります。特に4歳から6歳にかけては、口や鼻の奥の「扁桃(へんとう)」と呼ばれる組織が大きくなるため、より中耳炎にかかりやすくなります。風邪が治っても鼻水が続く場合や、呼びかけへの反応が悪い場合、口呼吸が続く場合などは要注意です。
2 遺伝による難聴
家族、血縁者で両耳が高度の難聴である方が複数いる場合、血液検査で行なう遺伝子検査で、遺伝との関係をある程度予測できます。この検査は、遺伝カウンセリングを行なえる施設で、保険の適用内で受診することができます。検査のメリット、デメリットをよく相談してから、受けるかどうかを決めることをお勧めします。
3 先天性風疹症候群
2013年は久々に風疹が大流行しました。妊娠の初期に風疹にかかると、胎児は高確率で先天性風疹症候群(先天性心疾患、白内障、高度の両耳難聴などが起こる)になります。風疹は戦後に定期的な流行があり、ワクチン接種で流行は抑えられてきました。しかし、最近のワクチン接種を敬遠する傾向や、過去にワクチン接種に関する法改正が何度か行なわれる中で、接種を受けていない世代ができたことなどが、2013年の流行につながったと考えられています。特に妊娠に関わる世代では、男女を問わずワクチン接種をお勧めします。各自治体で助成のシステムがあるので、利用してみましょう。
解説:東川 雅彦
中津病院
耳鼻咽喉科・頭頸部外科部長
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