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2013.07.16
突発性難聴は、それまで耳の病気を経験したことのない人が明らかな原因がないにもかかわらず、ある日突然耳が聞こえなくなる病気です。少し前のデータになりますが、2001年の厚生労働省の調査では、全国に年間3万5000人(人ロ100万人に対して275人)の患者がいると推定されました。患者は一般的に30~60歳代(特に50歳代)に多く、発生率にそれほど男女差はありません。
突発性難聴の原因は不明です。有力な説としてウイルス感染説、循環障害説などが言われていますが突発性難聴の原因は一つではなく、さまざまな原因が組み合わさったものではないかと考えられています。
厚生労働省では、突発性難聴の診断基準を「突然の、文字どおり即時的な難聴、または朝目が覚めて気づくような難聴。ただし、難聴が発生したとき、就寝中や作業中など、自分がそのとき何をしていたかが説明できるもの」などとしています。
突発性難聴は3分の1が完治し、3分の1が回復しても難聴が残り、残りの3分の1は治らずに終わると言われています。発症して約1カ月で聴力は固定してしまうため、早期発見、早期治療がとても重要になります。特に、発症してから2週間以上経過した場合、高度の難聴を認める場合、回転性のめまいを伴う場合、高齢者や10歳以下の子どもの場合は予後が悪くなる可能性があります。突発性難聴は、発症して7日以内に治療を受けることが大切であり、急に聞こえにくくなったと思ったら早めに受診することをお勧めします。
ある日突然、片側の耳が聞こえなくなります。難聴の発生と前後して、耳鳴りや耳が詰まった感じ、めまいや吐き気を伴うこともあります。特に、耳鳴りが伴うことが多くあります。めまいは、症状が良くなった後に繰り返し起こることはありません。また、突発性難聴では耳以外、手足の麻痺、意識障害などの神経症状は見られません。発症前に患者が疲労感を感じていることが多いようです。
突発的に発症することから、患者さんは症状が起こったときや、そのときの状況を覚えていることが多いのも、この病気の特徴といえます。いつ頃から症状が起こったのかはっきりせず、少しずつ聞こえなくなったというような場合は突発性難聴ではありません。
なお、突発性難聴の大きな特徴として再発をしないことが挙げられます。したがって、突然難聴が再発した場合は、メニエール病、聴神経腫瘍、心因性難聴など、他の疾患の可能性があります。
患者さんは発症前に精神的、肉体的なストレスを感じていることが多いようです。また、 糖尿病や多量の飲酒もリスクになるという報告もあります。
突発性難聴の治療で大切なことは安静にすることです。安静にして、ストレスを軽減することが何より重要です。安静にするだけでも、内耳の循環障害が改善することがあります。
現在、突発性難聴に対してはさまざまな治療法が検討されていますが、どの治療法が有効かは明らかではありません。現時点では発症時の状況、症状、既往歴などを総合的に判断して副腎皮質(ふくじんひしつ)ステロイド、血管拡張薬、抗凝固薬、代謝改善薬、ビタミン製剤などを組み合わせた治療を行なうのが一般的です。難聴が重度の場合は、入院による治療が必要になることもあります。
解説:疋田 紀子
大阪府済生会 富田林病院
耳鼻咽喉科
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