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2024.07.10
不安定狭心症とは、心筋に血液を届けて栄養を補給する冠動脈が、完全に閉塞する「心筋梗塞」の一歩手前にある状態のことをいい、狭心症の中でも心筋梗塞の危険性が高い状態です。
動脈硬化などによって冠動脈の血流が悪くなり、心筋に十分な血液を送れない状態を「狭心症」といい、胸痛や圧迫感、締めつけ感という症状が現れます。狭心症は、胸痛の頻度や継続時間など症状の安定具合から「労作性狭心症(安定狭心症)」と「不安定狭心症」に分けられます。
胸痛発作の頻度や強度が一定である労作性狭心症と比べて「胸部圧迫感(締め付けられるような痛み)」を強く感じるようになり、その頻度も徐々に増加します。それほど身体を動かしていなくても症状が出るようになり、持続時間も20分以上など、比較的長くなります。人によっては左腕や肩、歯や顎の痛みとして感じる場合もあります。
症状の頻度や持続時間などが狭心症と見分ける情報になるため、症状の把握などの問診が最も大切です。さらに、胸部レントゲン(X線)検査、心電図、血液検査、心臓超音波(心エコー)検査、冠動脈CT(コンピュータ断層撮影)、冠動脈の狭窄・血流の状態を調べるカテーテル検査なども行ないます。
検査名 | 検査方法 | 検査でわかること |
胸部レントゲン(X線)検査 | レントゲン(X線)で胸部/背部を撮影 | 心臓の大きさや心不全、肺の異常の有無 |
負荷心電図検査 |
胸部に運動負荷用の心電図装置、腕に血圧測定装置を装着。運動によって心臓に負荷をかけ、運動前後の変化を比較 |
血圧低下/上昇や心筋梗塞、不整脈の有無、心臓の異常 |
心臓超音波(エコー)検査 | 超音波を心臓にあて、形や動きなどの様子を撮影 | 心臓の大きさや弁の機能、動きなど |
冠動脈CT(コンピューター断層撮影) | 造影剤を注射し、心拍に合わせて心臓(冠動脈の様子)の撮影を行なう | 冠動脈の狭窄の有無 |
冠動脈血管造影検査(心臓カテーテル検査) | 手首の動脈や鼠径部からカテーテルを挿入し、冠動脈の血管造影検査を行なう | 冠動脈の狭窄の有無 |
症状の原因となっている冠動脈狭窄(動脈硬化などによって血管内側が狭まること)に対して、血管を拡張する冠動脈形成術(カテーテル治療)や、冠動脈に移植した血管をつなげて迂回路をつくる心臓バイパス手術を行ないます。
上記のような外科的治療が必要ではない場合は、血液をサラサラにする抗血小板薬、冠動脈を広げるカルシウム拮抗薬、コレステロール値を低下させる薬、血管を拡張させる薬などが使われます。また、狭心症の治療を既に行なっている人は、薬の追加や変更を検討する場合もあります。
胸痛発作や違和感(圧迫感、焼け付くような感じ)が、安静時でも現れる、長く続く、回数が増えていると感じた場合は、直ちに循環器内科の専門医を受診してください。
狭心症や心筋梗塞を防ぐには、動脈硬化の進行をおさえることが最も大切です。そのためには「生活習慣の見直し」が重要です。具体的には、以下のようなことを意識して生活しましょう。
・脂質、糖質、塩分を取りすぎず、タンパク質や野菜を十分に取り、バランスのよい食生活を意識する
・無理のない範囲で運動習慣を身につける
・禁煙する
・ストレスをためないよう心がける
生活習慣病(高血圧症、糖尿病、脂質異常症、肥満など)を指摘された場合は、医師から指導された薬物療法を継続することも重要です。また、不安定狭心症は遺伝的な影響を受けるため、血縁者に心筋梗塞を起こした人がいる場合は特に注意しましょう。
解説:山田 実
静岡済生会総合病院
副院長 循環器内科部長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。