済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
一般の方の心身の健康や暮らしの役に立つ情報を発信中。「症状別病気解説」をはじめとして、特集記事や家族で楽しめる動画など、さまざまなコンテンツを展開しています。
2024.07.03
心臓は心筋という筋肉でできており、心筋が収縮することで全身に血液を送っています。その心筋に血液を届けて栄養補給する血管(冠動脈)が、動脈硬化などで血管内側が詰まって狭くなる(狭窄)と血流が悪くなり、心筋に十分な血液を送れない状態になります。これを狭心症といい、胸痛や圧迫感、締めつけ感などの症状がみられます。
狭心症は、胸痛の頻度や継続時間など症状の安定具合から「労作性狭心症」と「不安定狭心症」に分けられます。
労作性狭心症とは、冠動脈が狭くなっているときに、日常動作や運動、力仕事など(労作)で身体的なストレスを感じて冠動脈の一部が詰まり、十分な血液を心筋へ届けられなくなる状態をいいます。
労作性狭心症は、胸痛発作の頻度や胸痛の強度が一定ですが、不安定狭心症は「胸部圧迫感(締め付けられるような痛み)」を強く感じるようになり、その頻度も徐々に増加していきます。完全に冠動脈が閉塞する一歩手前の状態で、狭心症の中でも心筋梗塞の危険性が高いとされています。
階段や坂道を登るなどの運動や動作を行なったときに、冠動脈が細くなり血液供給が追いつかず、胸痛・圧迫感・締めつけ感などの発作が一定の頻度、強度で起こります。症状は大体数十秒〜数分で治まります。
検査では胸部症状に関する問診が最も重要で、症状が起こるタイミングや持続時間、痛みの様子、放散痛(狭心症の場合は左肩が痛くなる場合がある)などを確認します。問診によって労作性狭心症が疑われる場合は、以下の検査を行ないます。
検査名 | 検査方法 | 検査内容 |
胸部レントゲン(X線)検査 | レントゲン(X線)で胸部/背部を撮影 | 心臓の大きさや心不全、肺の異常の有無 |
負荷心電図検査 |
胸部に運動負荷用の心電図装置、腕に血圧測定装置を装着。運動によって心臓に負荷をかけ、運動前後の変化を比較 |
血圧低下/上昇や心筋梗塞、不整脈の有無、心臓の異常 |
心臓超音波(エコー)検査 | 超音波を心臓にあて、形や動きなどの様子を撮影 | 心臓の大きさや弁の機能、動きなど |
冠動脈CT(コンピューター断層撮影) | 造影剤を注射し、心拍に合わせて心臓(冠動脈の様子)の撮影を行なう | 冠動脈の狭窄の有無 |
冠動脈血管造影検査(心臓カテーテル検査) | 手首の動脈や鼠径部からカテーテルを挿入し、冠動脈の血管造影検査を行なう | 冠動脈の狭窄の有無 |
冠動脈を広げる薬やコレステロール値を下げて動脈硬化が進まないようにする薬、血液をサラサラにして血管が詰まらないようにする薬、心臓の動きを落ち着かせる薬などを使用し、薬物療法を行ないます。病態が悪化して冠動脈が完全に詰まる心筋梗塞のリスクが高いと判断した場合は、冠動脈形成術(カテーテル治療)を行なうこともあります。
運動時または階段や坂道を登ったりしたときに、息切れ、締めつけ感、胸痛・胸部圧迫感を感じた場合は、早めに循環器内科専門医を受診してください。
狭心症や心筋梗塞の予防には、動脈硬化の進行を防ぐことが最も大切です。
そのために、以下のようなことを意識して生活習慣を見直しましょう。
・脂質、糖質、塩分を取りすぎず、タンパク質や野菜を十分に取り、バランスのよい食生活を意識する
・無理のない範囲で運動習慣を身につける
・禁煙する
・ストレスをためないよう心がける
生活習慣病(高血圧症、糖尿病、脂質異常症、肥満など)を指摘された場合は、医師から指導された薬物療法を継続することが重要です。また、不安定狭心症は遺伝的な影響を受けるため、血縁者に心筋梗塞を起こした人がいる場合は特に注意しましょう。
解説:山田 実
静岡済生会総合病院
副院長 循環器内科部長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。