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2013.08.09
急性中耳炎は、鼻やのどについた細菌が、耳管から中耳腔に感染することによって起こる病気です。風邪などの感染後に引き続いて発症することが多く、肺炎球菌、インフルエンザ菌の感染が発症原因の8割を占めています。
発症すると、耳の鼓膜が赤く腫れ、中耳腔に水や膿がたまります。重症になるほど腫れがひどくなり、かかった患者さんの約10%が鼓膜に穴が空いて、そこから膿が出てくることがあります。
急性中耳炎の起こるしくみ
急性中耳炎の治療では、まず鼻やのど、中耳腔の中にある膿を採取して、原因菌の種類を調べる検査を行ないます。検査結果の他、全身の状態、鼓膜の様子などを加味し、総合的に判断して、治療を進めていきます。
軽症の場合は、必要に応じて痛み止めを投与しながら、様子を見て治るのを待ちます。
症状が重い場合は、細菌を殺すために抗菌薬を投与します。特に、「アモキシシリン」という抗菌薬は中耳腔に到達しやすく、さまざまな細菌に対して強い殺菌力を発揮するので、中耳炎の治療によく用いられています。
また、別の処置として、鼓膜を切り開き、中耳腔にたまった膿を取り除くこともあります。
鼻と耳は奥の方でつながっているので、鼻の奥に膿がたまっていないかを確認することも重要です。鼻汁を吸引したり、鼻の穴の奥にある空洞の一つ・上顎洞を洗浄したりして、周辺の膿を取り除き、細菌を減らします。
急性中耳炎では、以下のような特徴的な耳の症状が見られます。
・耳の痛み、圧迫感
・耳から膿が出る
特に、耳の痛みは急性中耳炎の患者さんの約70%に認められます。一方、耳から出る膿は急性中耳炎における特徴的で重大な症状ですが、この症状が出る患者さんは全体の約10%に過ぎません。
また、約90%の患者さんにおいて、風邪のような全身症状もみられます。特に、発熱は重症度を決定する上で重要な症状です。
この病気は小さな子どもが多く発症する病気ですが、まれに成人がかかることもあります。
乳児がかかった場合、たとえ耳の痛みがあったとしてもうまく訴えられず、泣き叫んだり、ぐずったりすることでしか症状を表現できません。そのため、乳児が発熱したり、風邪のような症状を示した場合は、急性中耳炎が隠れていないかを確認することが重要になります。
急性中耳炎を発症してから5日ほど経つと、ほとんどの患者さんは具合の悪さを感じなくなります。一方で、鼓膜の炎症はなかなか改善しないことが特徴です。5日目の時点では、約80%もの患者さんに鼓膜の炎症が残っています。
そのため、たとえもう治ったと感じたとしても、鼓膜の症状が十分に治癒するまで通院・服薬を続けることが大切です。
集団保育を受けている子どもは、急性中耳炎の原因になる細菌にさらされる機会が多いため、発症するリスクが高くなります。また、低年齢の子どもや、授乳期間が短かった子どもは免疫力が低いので、特に注意が必要です。
家庭において、鼻咽腔洗浄(鼻うがい)を行なうと、鼻やのどにいる細菌を減らすことができるので効果的です。病院では鼻の洗浄を行ない、その後霧状になった薬剤を鼻の中に噴霧すること(ネブライザー療法) によって、細菌を減らすこともできます。
最近、日本でも接種できるようになった肺炎球菌ワクチンは、難治性の急性中耳炎を減少させることが期待されています。しかし一方で、インフルエンザ菌に対するワクチン(Hibワクチン)は、急性中耳炎を起こすものとは違う型の菌をターゲットとしているので、中耳炎の予防効果はほとんどありません。
急性中耳炎を繰り返す子どもや、何カ月も治らない患者さんの場合は、中耳腔と鼻腔をつないでいる耳管の通りが悪くなっている可能性が高いと考えられます。そのため、鼓膜に穴を空けてチューブを通し、耳管の代わりにチューブを通して空気を入れ替えたり、水や膿を排出したりできるようにする手術(鼓膜換気チューブ挿入術)が有効です。この手術は外来、もしくは入院することで行なうことができます。
解説:荒井 潤
済生会有田病院
耳鼻咽喉科医長
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