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2024.01.31
軟骨無形成症は、先天性の原因によって複数の骨・軟骨などの骨格を形成する組織に異常が起こる疾患群である「骨系統疾患」の中で、最も頻度の高い病気の一つです。発症頻度はおよそ2万人に1人といわれています。遺伝子異常が原因で発症する病気で、具体的には「FGFR3」という遺伝子の変異で骨の成長に必要なアミノ酸が変化し、発症することが明らかになっています。
出生時から明らかな四肢短縮(ししたんしゅく=手足が短い状態)があり、乳児期から低身長が目立ち始めます。次第に四肢短縮を伴う低身長が顕著にみられるようになり、治療を受けない場合の最終的な身長は、男子で131cm、女子で124 cm程度といわれています。
そのほかの身体的特徴として、三尖手(さんせんしゅ=手を広げた際に中指と薬指が離れる)、脊柱前弯(せきちゅうぜんわん=背骨が前方に曲がった状態)などもみられます。頭頂骨を含む頭蓋冠(とうがいかん=頭蓋骨の上半分の脳を保護する部分)や下顎骨(かがくこつ)などは比較的成長が保たれるため、頭部が相対的に大きくなり、額や下顎が突出して鼻の付け根がくぼむなど、特徴的な顔貌(がんぼう)を呈します。
身体的特徴を原因とするさまざまな合併症が生涯を通じて現れます。乳幼児期には大孔狭窄(だいこうきょうさく=頭蓋骨の底の部分が狭くなっている状態)による脳幹部・頸髄の圧迫により、脳の呼吸中枢が機能しなくなることで起こる中枢性睡眠時無呼吸や、四肢麻痺などの症状が出現することがあり、注意が必要です。そのほかにも、反復性中耳炎や難聴なども小児期からよくみられます。
また、成長とともに脊柱管狭窄が進行すると、しびれ、歩行障害、排尿障害などの症状を伴います。一方でほとんどの場合、知的発達に影響を及ぼすことはありません。
典型的な例では、身体所見とX線所見から診断に至ります。軟骨無形成症以外の骨系統疾患との鑑別のために遺伝子検査を行ない、FGFR3遺伝子変異の検索が必要となる場合もあります。
現時点で根本的な治療法はありません。
低身長に対しては成長ホルモンの注射や、骨に切れ目を作って引っ張った状態で固定具を使って骨を伸ばす「四肢延長術(骨延長術)」などが適応となります。また、最近では骨の成長を加速させる薬「ボソリチド」も開発され、新たな治療の選択肢となっています。
合併症への対応や治療は「予防の基礎知識」の項を参考にしてください。
軟骨無形成症の遺伝形式は常染色体顕性(優性)遺伝であり、両親のいずれかがこの病気の場合、50%の確率で子どもに遺伝します。しかし、ほとんどの症例は、遺伝子の突然変異による散発例(非遺伝性)であることが分かっています。
胎児期の超音波検査で四肢短縮がみられ、出生前から軟骨無形成症が疑われることも珍しくありません。また、出生前に診断がつかなかった場合でも出生時や出生後、比較的すぐに特徴的な外表所見(頭や四肢、顔立ちなどの特徴)から診断に至ることが多い病気です。
軟骨無形成症の軽症型である「軟骨低形成症」の場合は、所見が軽度のため乳児期の診断が困難なことも多く、定期的なフォローアップによる観察が必要です。
軟骨無形成症の合併症を予防することは困難です。すでに発症している、または発症が予想される合併症は、専門の診療科で適切に対処していく必要があります。
乳児期に重篤な問題を起こす可能性のある「大孔狭窄」に対しては定期的にMRI検査による評価を行ない、症状や画像所見により脊髄の周辺の空間を広げる「大後頭孔減圧術(だいこうとうこうげんあつじゅつ)」が必要かどうか、脳神経外科と協議します。
また、睡眠時無呼吸や繰り返す中耳炎に対しては、耳鼻科で行なう「扁桃摘出術」などの治療が有効な場合があります。肥満も頻度が高い合併症の一つであるため、小児科医による定期評価や生活管理が重要になります。
解説:原尾 拓朗
日向病院
小児科 医長
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