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2015.08.31
踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう 別名:セーバー病、シーバー病)は、10歳前後の男児に多くみられる病気で、かかとの軽い腫れ、圧痛(押すと痛いこと)、歩行時痛がその症状です。過激な運動の後に症状が出ることが多く、かかとの痛みのため、つま先歩きになることもあります。
発育期の子どもの弱い踵骨骨端部(かかとの骨の端でアキレス腱が付着しているところ)に運動などで負荷がかかり、そこにアキレス腱の引っぱる力が持続的に加わることで、踵骨に血流障害が起こり、踵骨骨端核(かかとの骨の骨端軟骨より先の部分)の壊死(えし)、または骨軟骨炎を発症するのがこの病気です。
発育期の踵骨の名称
X線撮影では、踵骨骨端核の不規則な骨硬化像を示しますが、症状とX線像の変化が一致しない場合もあります。全身的系統疾患ではなく、局所疾患であり、血液検査などでは正常値を示します。
まずは局所安静とし、過激な運動は中止して経過をみます。痛みが強く続く場合には、歩行を免荷(かかとに体重をかけないこと)にするため、松葉杖を使います。または、足底挿板(そくていそうばん:靴の中敷き)を使用します。
経過は1~数年と長いことが多いですが、予後(治った後の状態)は一般に良好です。
10歳前後の、特に男児が、過激な運動後にかかとの痛みを訴える場合は、踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう)の可能性があります。まれに、女児でも起こることがありますし、両足に発症することもあります。
痛みが1日程度で治まり、普通に歩けるようであれば、しばらく様子をみてもかまいませんが、痛みが続く場合や、何度も繰り返す場合、また軽度でも腫れがある場合は、整形外科を受診してください。
X線撮影で異常がみられないこともありますが、他の病気や骨折などがないかを確認するためにも、早期の受診が大切です。
運動前の十分なウォームアップや、ストレッチングがその予防につながります。
ただし、発育期の子どもの骨端軟骨(成長線)は盛んに成長が行なわれているため、大人の骨より外力に弱く、障害を受けやすくなっています。外力が骨折を引き起こすほど強くなくても、繰り返し同じ場所に力が加わると、痛みや変形を引き起こします。これは、子どものスポーツ障害としてもよくみられる、使い過ぎ症候群(overuse syndrome)の一種です。
子どものスポーツ障害のなかでも、野球による肩・肘の障害や、ランニング、ジャンプによる膝や下腿(かたい:すねやふくらはぎ)の障害などは、比較的起こる頻度が高く一般的にも認知されているため、子どもが症状を訴えた場合、指導者や親は適切な対応ができるようになってきています。一方、踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう)のように、ほとんど自覚症状のみで、腫れや関節機能障害が少ない病気の場合は、病院受診もせずに運動を続けてしまい、症状を長引かせてしまう可能性があります。
活発な子どもや、スポーツ・ダンス等をしている子どもが、かかとの痛みを訴える場合には、踵骨骨端症のような病気があるということを思い出し、周囲の大人が早めに気づいてあげることが重要です。
解説:宗安 克仁
京都府病院
整形外科副部長
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