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2018.10.24
ふくらはぎの筋肉とかかとの骨(踵骨=しょうこつ)を結ぶ太くて丈夫な腱であるアキレス腱に炎症を起こした状態です。一般にアキレス腱炎は剣道や陸上、ジャンプスポーツなど運動選手に多くみられます。走るときなどにふくらはぎの筋肉が足の裏を踏み返す動き、つまり地面を蹴ってつま先立ちになる動きに関係しています。運動で繰り返し負荷がかかった後に十分な回復期間をとらないと、アキレス腱の炎症が起こることになります。
図:アキレス腱炎
診断はスポーツなど原因となることがないかといった問診、痛みの部位に加え、場合によってはレントゲンやMRIなど画像検査によって行なわれます。
運動をしているときや座っていて歩き始めるときに、ふくらはぎからかかとのあたりにかけて痛みを感じることがあります。ほかにも、アキレス腱を軽く触ると、痛みを感じる以外に腫れていることがあります。
安静にして過度な運動を中止し、アイシング、外用剤や消炎鎮痛剤の内服など保存的治療(出血を伴わない治療)を行ないます。治りにくいと診断された場合にかかとの部分を高くした中敷きを使うと、アキレス腱の過度な緊張を緩めることができます。
また、似た病気で「アキレス腱周囲炎」というものがあります。炎症が腱自体でなく腱の近くの組織(パラテノンというゼリー状の組織や皮下脂肪)に生じる病気で、診断ではアキレス腱炎と区別しますが、アキレス腱炎と同様の保存療法を行なうことになります。
いずれにしても、まず整形外科の診察を受けて正しく診断をしてもらうことが重要です。
運動のやり過ぎでアキレス腱がその負荷に耐えられなくなることで治りにくいと診断された場合にかかとの部分にゲルが付いている中敷きを使うことが、この病気の一番の原因です。そのため、スポーツ選手が試合前などで普段より練習量が増えている時期や、部活動やサークルに入ったばかりで身体がそのスポーツに慣れていない時期、普段運動しない人が急にやり過ぎた場合に、アキレス腱に痛みが生じていないか注意すると早く気づきやすいです。
アキレス腱炎は治療が手遅れになるなどといった事態は起こりにくいですが、アキレス腱に近い部位が急に痛くなると「アキレス腱断裂」やかかとの骨折も疑われます。これらは治療のタイミングを逃すと、完治が難しくなったり手術が必要になったりする場合もあるので、痛みを感じたらすぐに整形外科を受診しましょう。
予防の大原則は、過度な運動でふくらはぎの筋肉を酷使しないことに尽きます。また、普段から運動前にふくらはぎの筋肉のストレッチを入念に行なっておいて、筋肉の柔軟性を高めておくことも発症を予防するポイントです。また、運動が終わった後に筋肉のアイシングを行っておくと、炎症を早く鎮めやすくなります。
図:アキレス腱のストレッチ
翌日もアキレス腱に痛みが残っている場合は、一旦スポーツを休んだり別メニューで調整したりすることをお勧めします。痛みが残っているのにさらに運動を続けると、アキレス腱炎が生じやすくなります。テーピングを行なってふくらはぎの筋肉にかかる負担を少し減らすことは期待できますが、根本的な原因は過剰な運動にあるので、運動量を見直すようにしましょう。
解説:志田 義輝
済生会飯塚嘉穂病院
整形外科主任医長
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