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2024.01.10
アキレス腱周囲炎は、アキレス腱とその周囲に炎症や変性が起こり、痛みが生じる病気です。「アキレス腱付着部炎」「アキレス腱付着部障害」「踵骨滑液包炎」という病名で呼ばれることもあります。
アキレス腱は人間の身体の中で最も太く大きい腱であり、踵骨(しょうこつ=踵の骨)の後ろ側に付いています。アキレス腱周囲炎はスポーツや長距離歩行、仕事などで体重がかかったり足首の動きを繰り返したりして足への負担が大きくなったときに発症します。また、不適切な靴が原因となることもあります。
足首の後方でアキレス腱と踵骨の境目に痛みを感じます。腫れることもあります。痛みは足首を動かしたときや歩行時に生じ、特に階段や坂道の上り下りが大変になります。アキレス腱や踵骨部分が靴に当たったときにも痛みます。安静時はあまり痛みませんが、進行すると安静時にも痛みが続くことがあります。
アキレス腱の周囲や踵骨付着部に圧痛(押すと痛みを感じる)、把握時痛(アキレス腱をつまむと痛みを感じる)、腫脹、運動時痛(足首を動かすと痛みが出る)が認められ、アキレス腱の断裂がない場合に、アキレス腱周囲炎と診断されます。
検査は、X線検査で踵骨の骨棘(こつきょく=骨の出っ張り)がみられることがあります。MRI検査ではアキレス腱と踵骨の境目に腫脹や水分の貯留(滑液包炎)を認める場合があります。
まずサポータや弾力包帯を使用して、足首の安静を図ります。歩行障害が強いときは松葉杖を使用して免荷(足に体重をかけないこと)することもあります。踵が高めの靴に変えることも有効です。発症の原因となった動作や作業があれば、一定期間控える必要があります。
薬物療法は鎮痛作用のある外用剤(貼り薬や塗り薬)や内服薬を用います。理学療法(リハビリ)として下腿筋(かたいきん=膝関節から足首までの筋肉の総称)のストレッチを行ないます。痛みが強い場合はステロイドや局所麻酔薬を注射することもありますが、繰り返し投与するとアキレス腱が弱くなって断裂するなどの副作用もあるので、注意が必要です。
これらの治療で多くは回復しますが、痛みが取れないときはアキレス腱の変性した部分の切除、骨棘の切除、滑液包の切除といった手術が考慮されます。
スポーツ、ランニング・ウォーキング、仕事で長時間立つ、歩くといった動作や作業を行う人は、やりすぎや疲労の蓄積でアキレス腱、踵の後方の痛みが出てこないか注意しておく必要があります。若い人でも年配の人でも起こる可能性があります。
スポーツをする際は急に行なわず、事前に柔軟体操をしたり、アキレス腱など下腿筋のストレッチをしたりして、身体をほぐしてから行なうようにしましょう。スポーツ後はアイシングで筋の腫脹を軽減させ、再度筋のストレッチ、マッサージを行なって筋疲労の蓄積を避けるようにします。
もともと身体が硬い人は発症しやすいので、常日頃から筋の柔軟性を高めるような体操やトレーニングを心がけてください。
不適切な靴も発症に関与します。踵が低いぺたんこな靴、サンダルやスリッパのような踵が固定されない靴、足底が硬すぎる靴は避けた方が良いでしょう。仕事の関係で立っていたり歩いたりすることが多い人は、自分の靴を見直してみてください。
解説:石垣 大介
山形済生病院
整形外科診療部長
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