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2018.09.26
1回の大きな外傷で起こる通常の骨折とは異なり、骨の同じ部位に繰り返し加わる小さな力によって、骨にひびが入ったり完全に骨が折れたりした状態をいいます。スポーツ選手が短期間で集中的なトレーニングを行ったときに生じることが多いのが特徴です。中高年でも、スポーツ愛好家や重労働を繰り返している人に起こることもあります。競技種目や痛みが発生した部位で一定のパターンがあるので、整形外科を受診すれば比較的容易に診断されます。
運動をするなどして患部に圧力がかかると痛みを感じます。四肢の骨で最も多いのは、第2中足骨という足の甲の骨で、この部位の疲労骨折はかつて軍隊の行軍でよく見られたため、「行軍骨折(こうぐんこっせつ)」と呼ばれていました。
また、体幹部に感じる痛みで、部活動などで運動をしている10代の成長期の学生が腰痛を訴えている場合は注意が必要です。腰痛の原因は、過度な運動による背骨の周りの筋肉痛であることが大半ですが、腰椎(腰のあたりの背骨)の後方部に亀裂が入っていることが原因である場合もあります。このとき、腰椎の後方部に疲労骨折が起きて2つに分離する「腰椎分離症」という病気である可能性があり、治療のタイミングを逃さないことが重要です。
図:腰椎の疲労骨折
運動を中止するなど安静にすることが原則で、患部を安静に保つことができればほとんどの場合手術をしなくても治ります。運動以外については、日常生活の行動を過度に制限する必要はないことが多いです。ただし、安静にしていてもなかなか治らないこともあり、手術が必要となる場合もあります。また、治療が遅れると慢性化して治りにくくなることもあるので、症状から疲労骨折が疑われる場合、早く整形外科に受診することが非常に重要です。
多くの場合、スポーツに関連して起こります。アマチュアスポーツでは定期的にチェックを受ける環境を整えるのは困難ですから、競技をしていて慢性的に身体に痛みを感じるときは、疲労骨折を疑って受診しましょう。
しかし、疲労骨折が起こる人には10代の学生も多く含まれ、自分自身で気づくのも難しいといえます。ほかにも、「自分が抜けてチームに迷惑をかけたくない」「監督や親にいいづらい」「試合や大会に出たい」といった理由で我慢しがちなことも、思春期特有の問題であると考えられます。近年は以前と比べてスポーツを取り巻く環境も変化し、監督や保護者が無理な練習メニューを子どもに強いたりするケースも減ったように思います。さらにもう一歩進んで、周囲の人が子どもたちの様子を注意深く見ることが早期発見の大事なポイントになります。
最も重要なことは、過度なトレーニングをしないことです。疲労骨折は単調で過度なストレスが一つの部位にかかり続けた場合に起こるため、年齢や体格など身体の成長に合わせた練習メニューを採用したり、運動前に入念にストレッチを行って身体の柔軟性を高めたりすることが有効です。
再発しやすいことも疲労骨折の特徴で、発生の予防と同じぐらい再発の予防も重要です。数日安静にしていると日常生活でほとんど痛みを感じなくなり、完治したように錯覚してしまいます。そして、もう大丈夫だと自己判断して完治していない状態で競技に復帰し、同じ部位を痛めて病院に戻ってきてしまうケースがよくみられます。一旦骨折すると、その骨の新陳代謝が進んで完治するには数週から数カ月かかることを心にとどめておきましょう。また、レントゲン検査、場合によってはCTやMRI、骨シンチグラフィー(骨の組織の炎症など撮影して調べる)といった詳しい検査をしないと正確な判断はできません。そのため、自己判断で競技を再開せず、整形外科で定期的にレントゲンなどの検査を受けながら担当の医師と話し合って、復帰するタイミングを検討することを強くお勧めします。
解説:志田 義輝
済生会飯塚嘉穂病院
整形外科主任医長
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