済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
一般の方の心身の健康や暮らしの役に立つ情報を発信中。「症状別病気解説」をはじめとして、特集記事や家族で楽しめる動画など、さまざまなコンテンツを展開しています。
私たちの身体は血液が循環することで維持されています。血液は動脈や静脈といった血管の中ではサラサラの状態ですが、ケガなどで出血するとすぐに固まる仕組みになっています。なんらかの理由によって血の塊「血栓」ができ、それが血管内で詰まってしまうことを「血栓症」といいます。
心臓でできた血栓の写真
血栓は、できる場所によってさまざまな病気を引き起こします。脳の血管で詰まると脳梗塞、心臓の血管で詰まると心筋梗塞となり、これら動脈で詰まるものを総称し「動脈血栓症」といいます。一方、足の静脈に血栓ができることを「深部静脈血栓症」といい、この静脈血栓が肺の血管をふさぐと「肺塞栓症(はいそくせんしょう)」、いわゆる「エコノミークラス症候群」になります(下図参照)。
また、血栓は冬と夏に多くみられますが、その原因は季節によって異なります。冬は、身体が寒さで熱を逃がさないようにと血管が収縮することで詰まりやすくなりますが、夏は主に水分不足が原因です。汗などで失われた水分の補給が間に合わず脱水傾向となり、血液がドロドロになって血栓ができやすくなります。
ところで今、最も注意すべきは新型コロナウイルス感染症ですが、それも血栓症と関係があるといわれています。感染した患者のうち、重症者の多くに血栓症がみられたとの報告も出ています。
原因としては、①ウイルスの血管壁への直接的な攻撃によって血管壁が傷つき、血液が固まって血栓ができる、あるいは②感染に対する過剰な免疫反応により本来は生体防御に働くタンパク質「サイトカイン」が過剰生産され血栓ができる、といったことが考えられていますが、まだ分かっていないことも多く、感染予防が重要です。
血栓は全身のどこにでも生じる可能性があり、心筋梗塞、脳梗塞、肺塞栓などの原因となります。
新型コロナウイルスに感染していなくても、現在の私たちは血栓症の危険にさらされています。夏の暑い時に長時間マスクをしていると体温調節ができなくなり、脱水気味になります。
また肺塞栓症(エコノミークラス症候群)は、飛行機や車の座席で座ったままの人に起こることから「旅行者血栓症」ともいわれますが、例えば、寝たきりの高齢者や外出を控えている人、在宅勤務などによる極端な活動量の低下によっても、足の静脈に血栓ができやすくなります。さらに災害被災地などで避難生活が必要な場合も運動制限を強いられるため、肺塞栓のリスクが高まります。肥満、妊娠、がんなどの悪性腫瘍、慢性炎症疾患でも肺塞栓のリスクが高まることが知られています。
このような状況にある人は、身体に起こった小さな変化を見逃さないことが大切です。ふくらはぎや太もものむくみ、だるさ、赤みなども静脈血栓の兆候です。気になる症状がある人は、超音波(エコー)検査で静脈血栓の有無を調べることができるので医療機関に相談してください。
足にできた静脈血栓が血流にのって全身に飛んでいき、肺の血管で詰まると胸痛、呼吸困難、血圧低下などの症状が出て、命にかかわる場合もあります。現在、新型コロナウイルス感染症を危惧して医療機関への受診を控える傾向がみられますが、上記のような症状や麻痺などがある場合は、急いで受診しましょう。
夏の血栓は脱水が原因のことが多いため、かくれ脱水(熱中症)対策と似ている面がありますが、まずは水分補給が必要です。利尿作用(脱水リスク)があるアルコールなどの摂取は控え、水分を十分にとりましょう。長時間の移動がある場合などはこまめに姿勢を変え、手足を動かして血液の流れをよくしましょう。また日常生活の改善(運動、食事、大豆・発酵食品の摂取など)も予防効果があります。下記のイラストも参考にしながら、血液の流れがよくなるように心がけましょう。
解説:野副 純世
福岡総合病院
循環器内科 部長
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