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2017.02.20
脊髄腫瘍は、脊髄や脊椎からできた腫瘍と、そのほかの臓器から転移したものがあります。腫瘍が脊髄を圧迫することで症状が発生する病気です。首、胸、腰のどの部分に腫瘍ができるかによって症状が異なります。例えば、頸髄に腫瘍ができると手足や体幹の感覚障害や麻痺が起こります。胸髄では、障害を受けている部位よりも下の胸やおなかの感覚障害、下肢運動機能障害が起こります。腰髄に腫瘍ができた場合、手に影響はなく足に影響が出ます。一般的に、初期では手足の感覚麻痺が起こったり、局所に痛みが出現することが多いです。
また、大きく分けると、硬膜外と硬膜内に分類することができます。さらに、硬膜内にできる腫瘍は脊髄の中にできる髄内腫瘍と、脊髄の外にできる髄外腫瘍に分けることができます。
脊髄腫瘍の種類
硬膜外腫瘍の原因としては、ほかの臓器から転移したものが最も多いです。脊髄を壊しながら大きくなり、脊髄を圧迫することが知られています。
硬膜内髄外腫瘍は、神経そのものからできる腫瘍と、神経を覆っている膜からできる腫瘍がありますが、いずれも良性の腫瘍です。サイズが小さくて神経を圧迫しておらず、症状がない時には経過観察とする場合が多いです。
硬膜内髄内腫瘍は、脊髄の中に完全に埋まっている腫瘍です。この腫瘍は悪性度が高いものが多いです。
診断には、MRIが重要です。診断では、腫瘍が髄内にあるのか、髄外にあるのか、腫瘍の大きさがどれくらいなのかを調べます。腫瘍が見つかった場合には、種類を調べるために、造影MRIを行ないます。MRIでは、骨に関する情報が少ないため、脊髄造影後にCTを行なって、病変と骨の位置関係を調べることもあります。
基本的には外科的治療が行なわれます。硬膜外腫瘍と、硬膜内髄外腫瘍は、脊髄の中に腫瘍があるわけではないので、比較的容易に取り除くことができます。しかし、硬膜内髄内腫瘍の場合は、脊髄の中に腫瘍が埋まっているので、脊髄に傷をつけないようにする必要があり、難易度の高い手術となります。
ほかの腫瘍が転移して発生した脊髄腫瘍では、放射線や化学療法が行なわれることもあります。また、脊髄腫瘍によって排尿に障害が起こっている場合には、薬物投与をしたり、尿道カテーテルによって尿を排出する処置を行なうこともあります。もちろん、痛みが強い場合には、鎮痛剤などの薬物も使用します。
発生する頻度は10万人あたり1~2人で、脳腫瘍の1/5~1/10程度で比較的珍しい病気です。腫瘍が大きくなり脊髄の圧迫がひどくなると、手足の麻痺が出現し、尿や便が出にくくなったり、もらしてしまうこともあります。このような症状がみられる場合には、神経に影響を及ぼす脊髄腫瘍の可能性がありますので、専門医に診てもらいましょう。
脊髄腫瘍は、ほかの臓器に発生するがんと同じでいつ発生するかはわかりません。そのため、腫瘍が大きくならないうちに発見し、治療を開始することが重要です。また、どんな症状でも、1カ月以上続く場合にはなにかしらの病気が隠れている可能性があるので、原因不明の症状がある場合は、早めに専門医の診察を受けるようにしましょう。
解説:三木 潤一郎
済生会和歌山病院
脳神経外科医長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。