社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2017.02.15

脊髄硬膜動静脈瘻
(せきずいこうまくどうじょうみゃくろう)

Spinal Dural Arteriovenous Fistulas

解説:三木 潤一郎 (済生会和歌山病院 脳神経外科医長)

脊髄硬膜動静脈瘻はこんな病気

脊髄動静脈奇形という、血管に異常が起きる病気の一種です。人間の体の中には、血液を全身に送り出す血管である動脈と、血液を心臓に戻す血管である静脈が存在しています。脊髄硬膜動静脈瘻では、脊髄を覆っている硬膜にある動脈と静脈がつながります。動脈と静脈がつながると、血流速度の速い動脈の血液が静脈に流れ込み、本来静脈を流れて心臓に戻っていくはずだった血液の流れが滞ります。血液が滞って脊髄を圧迫すると、しびれなどの症状が起こります。

診断には、まずMRIによる検査が行なわれます。MRIで怪しい場所を見つけ、どこの血管に異常なつながりができているのかを調べるために、カテーテルを使って血管の1本1本を調べます。

正常な血液循環との比較
正常な血液循環との比較

脊髄硬膜動静脈瘻の治療法

治療は、外科手術によって行なわれます。この病気でつながっている血管は本来不要な血管なので、これを切断することで治療が行なわれます。ただし、切っても大丈夫な血管か確認するために、まずはクリップを用いて一度血流を遮断し、問題がなければ異常につながっている血管を切断します。

この病気では、動脈の血液が静脈の中に流れ込んでいるため、静脈が過剰な圧力を受けて太くなっていることが多いです。そのため、手術を行ない血管を切断すると、動脈の血液が流れ込まなくなるので、静脈が細くなっていきます。また、静脈は紫色、動脈は赤色が本来の色なのですが、手術を行なうと静脈が紫色に戻ることがわかります。

早期発見のポイント

この病気では、どの部位の脊髄が圧迫されるかで、症状が変わります。(以下に部位ごとの症状を記載)

部位 症状
上腕のしびれや痛み、歩行障害、頭痛、四肢麻痺など
体幹のしびれや痛み、歩行障害
下肢のしびれや痛み、歩行障害、排尿・排便障害

脊髄腫瘍の部位

首や腰由来の症状が出ている場合は、特徴的な症状なので見逃されることは少ないですが、胸部の異常に関しては見逃されやすいので注意が必要です。
この病気は怪我をきっかけに血管が傷ついて、修復される際に不必要な血管がつながってしまうことが原因といわれています。特に中年の男性に多いとされているので、年齢や症状が合致する場合は、脳神経外科を受診してください。

予防の基礎知識

この病気は、外傷をきっかけに起こるといわれていますが明確な原因は不明ですので、予防することは困難です。ただし、発見が遅れると排尿や排便に障害が起こることがあるので、早期に発見し治療を行なうことが重要です。しびれや歩行障害がある場合には、早期に専門医の診察を受けるようにしましょう。

三木 潤一郎

解説:三木 潤一郎
済生会和歌山病院
脳神経外科医長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE