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2024.11.27
ウイルス性結膜炎は、ウイルスに感染することによって結膜に炎症が起こる病気です。ここでは、アデノウィルス結膜炎(流行性角結膜炎・咽頭結膜熱)、コクサッキーウイルス結膜炎(急性出血性結膜炎)、単純ヘルペスウイルス結膜炎について紹介します。
■アデノウイルス性結膜炎
・流行性角結膜炎
アデノウイルスの感染による結膜炎で、感染力が強く、眼科領域で最も多い流行性疾患です。潜伏期間約7〜10日で発症し、典型的なものでは、急性濾胞性(まぶたの裏に小さなブツブツができる)結膜炎や、外気と接している角膜上皮が傷つくことで炎症が生じ、白血球が集まることで角膜が白く濁る角膜上皮下浸潤、耳前リンパ節の腫脹などがみられます。臨床症状は発症後5〜8日頃に最も強くなり、以後軽快します。発症後、約10日間は感染の恐れがあります。
・咽頭結膜熱
アデノウイルスの感染による結膜炎で、のど(咽頭)の粘膜やリンパ組織に炎症が生じます。のどの痛みや発熱を伴う急性咽頭炎として小児科や耳鼻咽喉科を受診されることが多いです。潜伏期間は約1週間で、急性濾胞性結膜炎がみられます。片方の眼だけに現れる片眼性が多く、約1週間で軽快します。夏に流行し、プールでの感染が多いことから「プール熱」とも呼ばれています。流行性角結膜炎よりも軽症が多く、自然治癒することもあります。
■コクサッキーウイルス結膜炎(急性出血性結膜炎)
コクサッキーウイルスの感染によって生じる結膜炎で、幼児を中心に接触感染します。潜伏期間は24時間ほどで、1〜2週間で症状が治まり、自然治癒します。
■単純ヘルペスウイルス結膜炎
多くは眼瞼(がんけん)ヘルペスを伴う、眼瞼結膜炎(まぶたの裏に炎症が起こる病気)の症状があらわれます。通常は片眼性です。急性濾胞性で軽度の場合が多く、初めてヘルペスウイルスに感染した子どもにみられます。
■アデノウイルス性結膜炎
・流行性角結膜炎
主な症状は流涙(涙が出る)・充血・異物感・眼痛(眼の表面に刺激を感じたり、眼の奥がズキズキと痛む症状)です。
・咽頭結膜熱
主な症状は充血・眼脂(目やに)・発熱です。
■コクサッキーウイルス結膜炎(急性出血性結膜炎)
眼脂・流涙・充血・まぶたが腫れる眼瞼腫脹の症状が両眼に急激に現れます。結膜に強い充血と濾胞がみられ、結膜の血管が破れることで、白目部分が血で赤く染まる結膜下出血を伴うことが特徴です。ごくまれに、発症から半年~1年程度経った後に運動麻痺が起こることがあります。
■単純ヘルペスウイルス結膜炎
主な症状は充血・眼脂です。
■アデノウイルス性結膜炎(流行性角結膜炎・咽頭結膜熱)
診断キット「アデノチェック」で検査を行ない、陽性反応であると診断されます。
■コクサッキーウイルス結膜炎(急性出血性結膜炎)
眼瞼腫脹の有無を確認し、まぶたを持ち上げ、結膜に充血や濾胞が生じていないかを確認します。結膜擦過物(けつまくさっかぶつ=結膜をぬぐった液)を用いた検査で陽性反応であると診断されます。
■単純ヘルペスウイルス結膜炎
PCR検査が有効です。
■アデノウイルス性結膜炎(流行性角結膜炎・咽頭結膜熱)
アデノウイルスに直接作用する抗ウイルス薬はないため、ステロイド点眼や抗菌薬点眼で治療します。ステロイド点眼は早期に症状を抑え、角膜上皮下浸潤(角膜に炎症が生じ、白血球が集まることで角膜が白く濁ってしまう)を抑制する効果があります。細菌感染を合併することがあるため、抗菌薬点眼を併用します。
■コクサッキーウイルス結膜炎(急性出血性結膜炎)
対処療法としてステロイド点眼と抗菌薬を使用します。
■単純ヘルペスウイルス結膜炎
抗菌薬点眼を併用しつつ、アシクロビル眼軟膏を1日5回塗布します。
眼に異物感を感じたり、充血や眼脂、感情によるものでない流涙、まぶたの腫れなどに注意してください。普段と異なる、サラサラした眼脂にも注意が必要です。
感染者の眼脂や涙に大量のウイルスが含まれており、多くが手指などを介する接触感染であるため、家庭内感染が多いです。家族に感染者がいる場合は、よく手を洗い、一緒にお風呂に入らない、タオルの共用などに注意してください。プール前後のシャワーも大切です。
また単純ヘルペスウイルス結膜炎はストレスや過労、発熱などによって引き起こされます。ストレスをためない健康的な生活を過ごすようにしましょう。
解説:大田 遥
呉病院
眼科 主任医長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。