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2020.06.24
自分の意思に反してまぶたがぴくぴく動いてしまったり、開けにくくなったりする状態をいいます。最も多いのが眼瞼ミオキミアといわれるもので、まぶたの一部がぴくぴくする状態です。特徴はいつの間にか起こりいつの間にか消え、長くは続かないことです。目の疲れ、ドライアイ、ストレスなどで起こるともいわれていますが、大多数はなんの前触れもなく起こります。原因ははっきり分かっていませんが、自然に改善するもので心配はいりません。
その一方で、治療が必要な眼瞼痙攣もあります。主なものが片目に起こる片側顔面痙攣と、両目に起こる眼瞼痙攣です。片側顔面痙攣
片側顔面痙攣は脳の中で顔面神経が圧迫されることによって起こるといわれています。顔面の半側(右側か左側)にのみ起こります。発症初期は前述の眼瞼ミオキミアに似た症状がみられますが、進行するとまぶただけでなく同じ側の頬や口元も痙攣します。
一方、眼瞼痙攣は両目のまぶたに痙攣が起こる状態で、両目が開けにくくなります。まぶしい、目を開けているのがつらい、目がうっとうしいなどの症状から始まります。まぶたのみならず顔面にも痙攣が広がって顔面痙攣となることもあり、メージュ症候群とも呼ばれています。まぶたや目が悪いのではなく、脳から送られるまぶたの開閉の指令がうまくいかなくて起こるといわれています。視力が下がることはありませんが、目が開けにくいため日常生活に大きく影響します。仕事や運転、家事などがしにくい、一人で歩けないなどです。
片側顔面痙攣は脳の画像検査などを行なって診断します。眼瞼痙攣は、まぶしい、目を閉じてしまう、目を開けられないなどの症状がみられる眼疾患を検査し、眼球、まぶたに異常所見がないことを確認します。そして、まばたきの仕方やまぶたの開閉の様子をみて診断していきます。日によって症状が異なるなどの特徴があるため、診断がつくまでに数回の診察を要することもあります。
片側顔面痙攣では脳外科医による手術療法を行ないますが、患者さんが頭蓋内の手術を希望されないときは、痙攣している筋肉にボツリヌス注射をして一時的に症状を軽くする方法を取ることがあります(ボツリヌス療法)。これは、筋肉にボツリヌストキシン(筋肉を緊張させている神経の働きを抑えるたんぱく質)を注射することによって緊張を緩め、症状を和らげる治療法です。
一方、眼瞼痙攣はまだ原因が解明されておらず特効薬はありませんが、症状を緩和するボツリヌス注射が現在のところ最も効果があります。ただし、効果が3カ月くらいしか継続しないことや、症状が全く消失するわけではないといった欠点もあり、ほかの方法(薬物療法、まぶたを支える「クラッチ眼鏡」など)と組み合わせて治療が行なわれています。
また、一部の眼瞼痙攣の発症に別の病気の治療で使われている薬物が関与していることがあります。薬物投与の中止によって痙攣が改善することもありますが、もともとの病気が悪化してしまう恐れがあるので、自己判断で治療を中断することは絶対にしてはいけません。主治医とよく相談してください。
片側顔面痙攣の初期症状は、日常で多くの人が経験する眼瞼ミオキミアに似ています。痙攣が右か左のいつも同じ側だったり、少しでも頬部や口元などに及んだりする場合は顔面神経が関与する片側顔面痙攣かもしれませんので医療機関を受診してください。
両側眼瞼痙攣の初期症状は、ドライアイや眼精疲労の症状とよく似ています。また、これらが合併していることも多々あります。しかし、ドライアイや眼精疲労の治療をしても改善しない場合は眼瞼痙攣かもしれません。思い当たる症状があるときは一人で悩まないで、眼科や神経内科などの医療機関を受診しましょう。
効果の期待できる予防法は残念ながらありませんが、片側顔面痙攣、眼瞼痙攣とも無理をしない、ストレスをためないなどに注意しましょう。ただし、片側顔面痙攣は高血圧症や動脈硬化症が関与している可能性もありますので、これらの管理で症状が緩和されることもあります。
解説:鈴木 美佐子
福島総合病院
眼科医長
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