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2019.09.25
涙液の質・量の低下によって不快な目の症状(視力低下、乾燥する感じ、異物感、疲れ目など)が生じる状態をいいます。
目の表面には涙液層があり、乾燥から目を守っています。この涙液層は油層、液層、ムチン層の3層構造になっていて、油層の油は眼瞼(まぶた)の縁にあるマイボーム腺という脂腺から、液層の液は涙腺から、ムチン(粘液)は角膜上皮と結膜上皮から分泌されます。この3層の構造になんらかの原因で異常が生じ、不安定な状態になると目の表面が傷つきやすくなります。
目と涙液層の構造
ドライアイの原因として、以下のものがあります。
1.涙液層の分泌異常
・マイボーム腺が十分に機能しない(加齢に伴うことが多い)
・涙腺の障害(シェーグレン症候群等の膠原病など)
・ムチンの分泌、発現の低下(類天疱瘡などの病気、広範囲の化学熱傷など外傷後)
2.まぶたなど目の表面を取り巻く周囲の変化
・結膜弛緩症(加齢による結膜のたるみ)
・まぶたの異常(眼瞼下垂、内反症、外反症、眼瞼手術後など)
・まぶた、結膜の炎症(アレルギー性結膜炎、眼瞼炎など)
3.環境因子
・乾燥した環境
・目の酷使(パソコン等の画面を見る作業など)
・コンタクトレンズ
・薬剤(点眼薬、内服薬)
「目の不快感、視機能異常(視力低下、見えづらいなど)の自覚症状がある」「BUT(涙液層破壊時間)が5秒以下」の2つの条件がそろえばドライアイと診断されます(ドライアイ診断基準2016年版)。BUTとは、フルオレセインという染色液を用いて、まばたきを我慢した状態で角膜表面の涙液層が5秒間で破綻するかどうかをみる検査で、病院で簡単に行なうことができます。なお、角膜上皮障害があってもなくても、目の表面での涙液の安定性が悪く、自覚症状があればドライアイと診断されます。
主に点眼薬を使用しますが、ドライアイの程度や原因によっては治療薬を使い分ける必要があります。なお、市販の点眼薬には防腐剤や余分な成分が含まれている場合があり、かえってドライアイの症状を悪化させることがあります。自己判断で使用せず、医療機関で処方される点眼薬か、市販薬の場合は防腐剤を含んでいない人工涙液を使用するのがよいでしょう。
極端に涙液の分泌量が減っている場合は、涙液量を保つために涙点(目頭にある涙の排出口)を「涙点プラグ」という栓で閉鎖する治療を行なうことがあります。
自覚症状の有無が診断のポイントとなります。視力が不安定(朝・仕事後にかすむなど)、異物感(目が乾燥した感じ、ごろごろする)、疲労感(目を開けているのがつらい)などの自覚症状がみられたら、医療機関を受診して涙液の状態をチェックしましょう。
また、まばたきが10秒間我慢できない場合はドライアイの可能性が高いため、診断を受ける必要があります。
ドライアイの発症には空気の乾燥などの環境因子も関係しているため、自分で注意したり生活を工夫したりすることで、発症予防や症状の改善が期待できます。なお、マイボーム腺の異常によるドライアイは、まぶたの縁を清潔に保ち、温罨法(おんあんぽう=目を温める治療)を行なうことで予防できる場合があります。
また、ドライアイの発症には空気の乾燥などの環境因子も関係しているため、以下の例のように自分で注意したり生活を工夫したりすることで、発症予防や症状の改善が期待できます。
・加湿器を使用して空気の乾燥を防ぐ。
・エアコンの風に直接当たらないようにする。
・寝るときには涙液がさらに減少するため、暖房を控えめにして、電気毛布などをつけたままにしない。
・コンタクトレンズではなく眼鏡を使用する(保湿できるドライアイ用の眼鏡もある)。
・パソコンでの作業やテレビの視聴などを長時間連続して行なわない(まばたきが減少し症状を悪化させやすい)。
・テレビやパソコンの画面を見るときのまぶたの開きが少なくて済むように、モニターの位置は低めにする
解説:加畑 隆通
水戸済生会総合病院
副院長
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