済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約67,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、404施設・435事業を運営し、67,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
40都道府県で、病院や診療所などの医療機関をはじめ、高齢者や障害者の支援、更生保護などにかかわる福祉施設を開設・運営。さらに巡回診療船「済生丸」が瀬戸内海の57島の診療活動に携わっています。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
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2013.02.01 公開
2025.06.30 更新
片側顔面痙攣は、顔の片側の筋肉が、自分の意思とは関係なくピクピクと動く病気です。
最初は片目の周りの痙攣が起こることが多く、徐々に頬や口の周りなどに痙攣の範囲が広がります。痙攣の程度が強くなると、顔がつっぱってゆがんだ状態になったり、痙攣の側に筋肉の麻痺が生じたりします。また、痙攣の頻度は、最初は緊張したときなどにときどき起こるだけのことが多いのですが、次第に長くなり、日常的に起こるようになることもあります。通常は片側だけに見られますが、ごくまれに両側に生じることもあります。
原因は解明されていませんが、顔の筋肉を動かす神経(顔面神経)が脳幹から出たところで、周囲の蛇行した血管により圧迫されることが原因の一つではないかといわれています。この病気で困っている方は少なくなく、中高年の女性に多いともいわれています。
きちんと診断をうけた片側顔面痙攣のほとんどは、生命に関わる病気ではないので、患者さんが気にならないようなら、経過観察とすることもあります。その場合には、顔に冷気が当たらないようにすること、睡眠不足・疲労・ストレスを避けること、禁煙や禁酒などが悪化の防止になります。
治療法は主に三つあります。内服薬による薬物療法、ボツリヌス毒素療法(痙攣している顔面筋への注射)、顔面神経と血管の接触をとり除く手術療法です。
薬物療法では、カルバマゼピン(テグレトール®)やクロナゼパム(ランドセン®、リボトリール®)の内服が多く行なわれますが、ボツリヌス毒素療法や手術療法に比べて効果は低く、眠気やだるさなどの副作用に注意が必要です。また根治療法ではないため、内服している期間しか効果がありません。一方で簡便にどの医療機関でも行なえる治療であることがメリットです。
ボツリヌス毒素療法は、2000年に保険適応もされ、安全性と有効性が高い治療法です。ボツリヌス毒素は筋肉の痙攣を防ぐ作用があり、痙攣している顔面筋に細い針で数箇所ボツリヌス毒素を注射する治療です。1回注射をすると、2~3日後から効きはじめ、3~4カ月ほど効果が持続します。しかし根治療法ではないため、注射を3~4カ月ごとに繰り返し行なうことが必要です。また全ての医療機関で行なっている治療ではなく、専門外来等を開いている医療機関を受診して行なうことが一般的です。
手術療法は、薬物療法やボツリヌス毒素療法の効果が不十分な方、副作用で継続できない方、職業などで完全な治癒(根治)を強く望まれる方、発症から長い年月が経ち症状が強くなった患者さんに検討されます。全身麻酔をかけて脳の深い部分の神経に接触する血管の圧迫を除く手術(ジャネッタ手術)になりますが、脳の中枢部に近いため高度な技術が必要になります。従って経験の多い脳外科の専門医に慎重に適応を決めてもらいます。また生命に関わる病気の治療ではなく生活の質を向上する治療であることから、手術のメリットとリスクを患者さんが十分に理解し納得した上で初めて行なう治療です。
高血圧や動脈硬化などの疾患がある場合は、併せて治療を進めます。
・片方の目の周りの痙攣
特に、最初はまぶたや目の周囲に痙攣が起こることが多いようです。次第に頬や口の周り、あごなどの筋肉の痙攣が同時に起こるようになります。疲労や緊張によって痙攣が起こる頻度が増加することが多く、仰向けに寝たりアルコールを飲むと軽くなる傾向があります。
病気そのものは生命に関わるものではありませんが、自分の意思とは関わりなく顔面が動くため、対人関係に苦労したり、仕事などに差し障ることもあります。また、片目をつぶってしまうことから、機器の操作が不自由になったり、自動車の運転のしづらさから事故を起こしやすくなったりという危険も生じます。
健康な人でも、疲れたときなどにはまぶたがピクピクすることがありますが、片側顔面痙攣の多くは、自然に軽快せず、症状の程度や頻度も増えていくことが多いようです。
痙攣が気になるようなら、神経内科、脳神経外科などで診てもらいましょう。顔面痙攣の診断は、慣れた医師が診察すればすぐにわかります。
まれに、血管の奇形、動脈瘤、腫瘍などが原因となることもあるため、これらの重大な病気が潜んでいないかを必ずチェックを受けることが大切です。MRIは、顔面神経根周辺の状態を血管などの構造とともに詳しく観察することが可能であり極めて有用です。
なお、チック、疲れ目の痙攣(眼瞼ミオキミア)などによって痙攣が起こる場合もあります。
片側顔面痙攣は、動脈硬化や精神的ストレス、疲労などと深い関係が想定されています。
動脈硬化の予防には、まず十分な血圧管理が大切です。糖尿病や脂質異常症を避け、青魚や食物繊維を中心とした食事を心がけましょう。喫煙や飲酒は控えることも大切です。ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動も動脈硬化予防に効果的です。
また、リラックスできる時間をとるようにして、精神的ストレスを解消しましょう。音楽鑑賞や読書などの趣味を楽しんだり、軽いストレッチなどを行なったりするのもよいでしょう。
監修:大木 宏一
東京都済生会中央病院
脳神経内科 院長補佐 担当部長
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