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2014.06.27
胸椎黄色靱帯骨化症とは、脊髄の後方にある椎弓(ついきゅう)の間を結ぶ靱帯(黄色靱帯)が、骨に変化(骨化/こつか)し、その厚みを増して脊髄を圧迫することにより、下肢に症状をきたす疾患です。
年齢的には40歳以降に発症することがほとんどで、男性にやや多く見られます。正確なデータは少ないですが、50歳以上の4.5%は黄色靱帯が骨化するとの報告があります。ただ、手術に至るような症例は10万人に1人程度で、脊椎の手術を受ける患者さん全体の1%弱であり、重症となるのは比較的まれな疾患です。
発症する原因は残念ながら不明です。このため、いわゆる難病と呼ばれる特定疾患に指定されており、症状が重くなった場合には公費負担で治療が受けられます。
黄色靭帯の骨化は、主に下位胸椎に起こりやすいため、手や腕などの上肢には症状が出ません。初期症状として、下肢の脱力やしびれ、こわばりが挙げられます。また、ときには腰背部の痛みや下肢の痛みが出現してきますが、痛みはない場合が多いです。数十~数百メートル進む度に休まないと歩けない(間欠性跛行/かんけつせいはこう)など、腰部脊柱管狭窄症と同様の症状が現れることもあります。重症になると歩行困難になり、日常生活に障害をきたす状態になります。
この病気の進み方は患者さんによってさまざまです。軽いしびれなどで、ほとんど進行せずに長年経過する患者さんもいれば、数カ月の間に症状が進行して歩行が困難になる患者さんもいます。また、転倒などの外から加わる軽い力で、急に症状が悪化することもあるため、注意が必要です。
この疾患は、X線検査やCT、MRIなどで発見され、症状がないものは治療の対象になりません。ただし、骨化が大きく、脊髄の圧迫が見られるものは、慎重な経過観察が必要です。保存的治療として、症状に応じて消炎鎮痛剤や筋弛緩剤、ビタミンB剤などの薬物療法が行われます。症状が進行してきたものに対しては手術が行われます。
胸椎黄色靭帯骨化症は、画像検査で偶然発見されることがしばしばあります。骨化した部分が小さく、無症状のときは安心してもよいのですが、骨化した部分が大きく、脊髄を圧迫しているようなものでは、厳重な経過観察が必要です。
初期症状としては、下肢のしびれや脱力、間欠性跛行などが現れますが、これは腰部脊柱管狭窄症と同様の症状です。このような症状を自覚したら、どの病気なのかを判別したり(鑑別疾患)、診断を確定させるため、整形外科医の受診をお勧めします。場合によっては、脊椎外科専門の整形外科医の診察が必要となります。
原因が不明な病気であるため、完全に予防することはできません。
この病気と診断されたら、転倒や転落などによる外傷で急激に症状が悪化することがあるので、くれぐれも注意が必要です。スポーツなど激しい運動をする場合は、医師と相談するようにしましょう。
また、症状がなくても、この病気は脊柱靱帯骨化症という病気の一部分と考えられるため、胸椎のみならず頚椎・腰椎のX線検査をお勧めします。
解説:岸本 哲朗
山口総合病院
院長補佐
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