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2014.08.27
気胸とは、肺内の空気がなんらかの原因で肺外の胸腔内に漏れて、肺がしぼんでしまった状態を言います。その胸腔内に漏れてしまった空気が、肺や心血管を圧迫している状態が緊張性気胸です。緊張性気胸は緊急で治療を要する疾患です。肺や心血管を圧迫するため、放置すると呼吸状態が悪化するだけでなく、血圧が低下したりショック状態となったりします。そのため、診断や適切な処置が遅れると多くの場合は致命的となり、命に関わる状態に陥ります。
気胸には、肺のう胞(ブラやブレブ)が破裂して空気漏れが起こる「原発性自然気胸」や、結核や間質性肺炎、腫瘍などの肺病変が原因の「特発性自然気胸」、交通事故や刺し傷など外的要因により肺が損傷されて起こる「外傷性気胸」などに分類されます。これらすべての気胸において緊張性気胸となる可能性があります。原因は、肺から空気が漏れる部位が、「チェックバルブ」という一方向だけに作用する弁のような構造となることにより生じると考えられています。そのような構造となると、息を吸い込む時には肺から空気が漏れるものの、息を吐く時には肺が閉じてしまうため、徐々に胸腔内に空気がたまっていき、肺や心血管を圧迫していきます。その結果、重篤な状態に陥ってしまいます。
命に関わる危険な状態なので、胸の中にたまった空気を外に出す「胸腔ドレナージ」を緊急に行なう必要性があります。この処置によってたまった空気が排出されると、肺や心血管の圧迫が解除されて危険な状態から脱出できます。胸腔ドレナージには、細い針などを胸に刺す方法と、比較的太いチューブを肺に留置する方法があります。しかし、チューブを留置する方法は処置に時間がかかるため、緊急性の高い緊張性気胸では、まずは針を胸に刺す穿刺(せんし)で迅速に対応する場合があります。また、胸部レントゲンや胸部CTを撮影すれば、緊張性気胸に陥っているかどうか確実に診断できますが、検査をしている間に全身状態が悪化し、手遅れになることもあります。そこで、緊張性気胸を疑う場合は、検査による確定診断を待たずに、速やかに胸腔ドレナージを行なうこともあります。
気胸の症状は、胸部の違和感、胸痛や背部痛、呼吸困難などさまざまです。原因がなく突然起こることもしばしばあります。緊張性気胸に進行すれば、急激に発症する胸痛、進行性の呼吸困難といった症状に加え、心血管を圧迫して静脈の流れが阻害されるためショック状態に陥ります。命に関わり、治療の緊急性が高い疾患なので、胸痛や背部痛、呼吸困難など、気胸が疑われる症状が出現した場合は、速やかに病院を受診することをお勧めします。
気胸の原因として最も多いのが、肺のう胞(ブラやブレブ)の破裂で起こる「原発性自然気胸」です。痩せ型の10~30代前半の若い男性に多く発症することが分かっており、「気胸体型」という概念があるほどです。痩せ型の若い男性で胸痛や呼吸困難が出現した場合は、気胸を発症した可能性があるので、すぐに病院を受診してください。また、胸を強く打つなどした場合でも、肺が裂けて気胸となる可能性があるので、病院の受診をお勧めします。
残念ながら気胸を予防する方法はありません。運動をしているときでも、安静にしているときでも、いつでも起こりえます。気胸になると、緊張性気胸に陥る可能性があるので、胸痛や呼吸困難などの症状が現れて気胸を疑う場合は、すぐに病院を受診してください。胸を強く打つなどすると外傷性気胸を起こすことがあるので、痛みが続く場合や呼吸困難がある場合は病院を受診してください。
また、喫煙している方は禁煙を心がけることが重要です。喫煙によって、慢性的な刺激で徐々に肺の構造が破壊されていき、肺疾患が悪化したり、気胸となる可能性を高めたりします。いったん破壊された肺は元に戻らないので、禁煙を強くお勧めします。禁煙が難しい場合は禁煙外来を受診する方法もあるので、医師に相談してください。
解説:神保 充孝
山口総合病院
外科部長
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