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2013.11.20
気胸とはなんらかの原因で肺に穴が開いてしまい、そこから肺の外側の胸腔(きょうくう)内に空気が漏れ、肺がしぼんだ状態をいいます。発症の原因により、外傷性気胸と自然気胸の2つに大きく分けられます。
交通事故や高所からの転落などにより、折れた肋骨が肺に刺ささることが原因となるのが外傷性気胸です。これとは反対に、自然気胸には外的な原因がありません。また、自然気胸はさらに2つに分けられます。そもそも肺気腫、塵肺(じんはい、じんぱい)、間質性肺炎などの肺疾患を患っている人の気胸を続発性自然気胸、肺の疾患を患っておらず、肺の表面にできた嚢胞(のうほう)=ブラ・ブレブが破裂する気胸を原発性自然気胸といいます。のう胞(ブラ・ブレブ)とは、肺表面の一部が泡や風船のように膨れる症状で、肺尖部(円錐状になっている肺の頂部)によくできます。これは15~25歳くらいの長身で痩せた男性にできやすいといわれています。
また女性の場合、生理の際に発症する月経随伴性気胸といった特殊な気胸もあります。
胸部レントゲンによって認められる肺のしぼみ具合などの基準で、以下のように分類されます。
軽度(Ⅰ度): | 肺の頂部が鎖骨より上にあり、少し肺がしぼんでいる状態 (外来通院が可能で、数日間の安静でよくなることがあります) |
中等度(Ⅱ度): | 肺の頂部が鎖骨より下にある状態 (入院して、チューブを胸腔に差し込み、空気を体外へ排出する胸腔ドレナージによる持続脱気療法が必要です) |
高度(Ⅲ度): | 肺が半分以下にしぼんでいる状態 (入院にて胸腔ドレナージによる持続脱気療法が必要です) |
気胸の重症度による分類
飛行機乗機時やスキューバダイビングを行なう際など、急激な気圧の低下を体験することで、のう胞(ブラ・ブレブ)が破裂しやすくなるので注意しましょう。飛行機内や海中で重度の気胸が起きると緊張性気胸と呼ばれる状態になり、胸腔内にたまった空気が心臓や肺を圧迫して、心肺停止の状態に陥る危険性もあります。
胸腔内にたまった空気が肺や心臓を圧迫する
また、再発を繰り返す患者さんのほか、航空機のパイロットや潜水士、海外旅行を予定されている方、妊娠・出産予定がある方は気胸の治療に際して手術を考慮したほうがよい場合もあります。
自覚症状には個人差がありますが、胸や背中の痛み、せきや息切れ、呼吸困難(息を吸っても大きく吸えない)などが一般的です。発熱はほとんどの症例でみられません。発熱がある場合は、肺炎や胸膜炎といった別の病気の可能性も考えられます。
症状の程度もさまざまで、「何か違和感があるな」といった程度の軽い痛みを感じる方もいれば、激痛を感じる方もいます。痛みの症状がない方は、気胸を発症したことに気付かないまま治ってしまう、という場合もあります。
気胸が疑われる場合は内科を受診してください。また、内科には総合診療内科、消化器内科、循環器内科、血液内科、心療内科、神経内科などさまざまありますが、自然気胸は呼吸器の病気なので呼吸器内科を受診しましょう。
総合病院で初診の場合は、検査から説明まで数時間を要することが多く、かなりの待ち時間が必要となります。そのため、まずはかかりつけの医師に診察してもらい、レントゲン検査をしてもらいましょう。レントゲンで肺がしぼんでいる状態であれば、気胸と診断されます。その後、呼吸器内科の専門医を紹介してもらうことで診療がスムーズ行なえるでしょう。呼吸器内科がない場合は、そのほかの内科もしくは呼吸器外科を受診してもかまいません。
続発性自然気胸に対しては、原則的に手術は行なわず、保存的治療と呼ばれる治療法を行ないます。胸腔内に薬剤を注入して肺と胸壁を癒着させる胸膜癒着療法や、気管支鏡で気管支内腔を塞ぐ気管支塞栓術があります。これらの治療を行なっても効果がなく、長期間治らない場合に手術を治療の選択肢として検討します。
自然気胸を治療する際、空気漏れが止まらなければ胸腔ドレーンを抜くことができません。また、一度自然治癒しても再発する可能性が50%程度、再発すると再々発の可能性が70%程度に上がり、発症する確率は高くなっていきます。
出血を伴っている症例(血気胸)や両側の肺が同時に気胸を発症した場合、また胸腔ドレナージを行なっても肺が広がらない(空気漏れが改善されない)場合は、手術をしなければなりません。近年では、カメラで胸の中の様子を見ながら、特殊な手術器械を使って操作を行なう胸腔鏡(きょうくうきょう)手術を基本的には行ないます。皮膚を1~2cmの大きさで3カ所切開し、カメラや手術器具を胸腔内へ挿入してのう胞(ブラ・ブレブ)を切除する、という方法です。症例によっては、皮膚を2cmの大きさに1カ所切開するだけで行なう手術も可能です。
一方、肺が胸壁と癒着している場合には胸腔鏡での手術は難しいため、皮膚を約10cm程度切開し、少し開胸して手術を行なうことがあります。主な合併症としては出血、肺を切除した箇所からの空気漏れ、メスを入れた箇所がズキズキと痛むといったことが考えられます。著者が勤務する福岡総合病院では、手術後の経過が良好であれば手術翌日の朝に胸腔ドレーンを抜き、夕方には退院していただいています。
解説:鹿田 康紀
福岡総合病院
呼吸器外科部長
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