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2022.04.13
過換気症候群とは、不安や緊張などの精神的ストレスが原因で、息を何回も激しく吸ったり吐いたりする状態(過呼吸状態)になることで生じるさまざまな症状をいいます。
ヒトの肺は酸素を体内に取り込み、体内で作られた二酸化炭素を体外に排出しており、酸素・二酸化炭素のバランス、血液中の酸・アルカリのバランスを保っています。過換気症候群では、過呼吸状態により血液中の二酸化炭素濃度が減少してしまい、体内がアルカリに傾きます。それによって血管が収縮したり、血液中のカルシウム濃度が低下したりして、さまざまな症状が出現します。
若者に多く、女性は男性の2倍多くみられます。一般に予後(発症後の経過)は良好で、数時間以内に症状は改善・消失します。
呼吸困難、手足の指先や口のまわりのしびれ、テタニー症状、頭痛、めまい、動悸、胸部圧迫感、吐き気、失神などがみられます。テタニーとは、筋肉の持続的な硬直・けいれんのことで、手指がこわばったり、顔が引きつったりします。痛みを伴うこともあります。
実際に低酸素血症(血液中の酸素が不足している状態)になることはありませんが、「うまく呼吸ができない」「酸素が足りない」などの空気飢餓感を訴える人が多く、ほとんどの場合、強い不安を伴っています。
過換気症候群の診断に確立した基準はありません。過換気症候群に適合した症状があること、過呼吸状態の改善で症状が速やかに消失すること、動脈血ガス検査で血液中の二酸化炭素濃度が減少してアルカリに傾いていることなどから診断します。
また、過換気症候群のほかにも、似たような症状を示す病気はたくさんあります。気管支喘息、肺血栓塞栓症、気胸、大動脈解離などです。それらの病気がないか、診察や血液検査、画像検査の結果などから判断します。
過換気症候群の人は強い不安を感じていることが多く、症状がさらに悪くなってしまう悪循環に陥っています。医師から診断を受けたとしても、過換気症候群で亡くなってしまうことはありませんので、まずは安心してください。
不安を感じすぎないことが重要です。リラックスすることで症状は改善します。横隔膜を使った腹式呼吸で、ゆっくりと息を吐くようにすると改善しやすくなります。それでも改善しない場合は、抗不安薬の内服や点滴を行なう場合があります。
不安神経症やパニック障害、うつ病などの精神疾患を持つ人は、過換気症候群を発症しやすい場合があります。強い不安や恐怖感を感じると過呼吸の発作が生じやすくなります。「医学解説」で記した症状がみられた場合は、過換気症候群の可能性があるので、まずはゆっくりと息を吐くことを意識しましょう。
過換気症候群を発症する人は、発作がないときも不安がみられやすかったり、感情が不安定になりやすかったりする傾向があります。好発年齢(ある特定の病気にかかりやすい年齢)や症状などでパニック障害と共通点が多く、パニック障害の症状の一つとして、過換気症候群を発症する場合もあります。パニック障害や不安神経症、うつ病などの精神疾患を持つ人では、それらの治療が過換気症候群の発症防止につながることがあります。
すでに発作を起こしたことのある人が同様の症状を感じたときは、ゆっくりと息を吐く呼吸を心がけてもらうことで、発作を予防できる場合があります。
解説:岡本 翔一
茨木病院
呼吸器内科部長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。