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2014.08.06
視神経、脳、脊髄といった中枢神経系のあらゆる箇所に病変ができる病気です。症状は、病変ができる部位によって異なるために、視力障害、しびれなどの異常感覚、感覚鈍麻(かんかくどんま/感覚が鈍くなること)、麻痺など、非常に多彩です。そして、再発と寛解(かんかい/症状が落ち着いて安定した状態)を繰り返すため、治療に公費からの補助が受けられる、特定疾患に認定されています。特定疾患としての多発性硬化症には、「視神経脊髄炎」も含まれているので、ここでは合わせて解説します。
視神経脊髄炎は、元々「多発性硬化症」としてひとまとめに考えられていました。視神経と脊髄に病変が好発するタイプが日本などに多く、大脳に病変が好発するタイプが欧米に多いとされてきましたが、近年、視神経脊髄炎に特異的な抗体(抗アクアポリン4抗体)が発見され、別の疾患として分けて考えられるようになりました。症状はよく似ていますが、患者層、検査結果、症状の強さ、治療法などが異なることが分かってきたためです。
多発性硬化症と視神経脊髄炎は、急性期には症状をできるだけ速やかによくするための治療を行ない、寛解期には症状を再発させないための治療を行ないます。
急性期においては、どちらの病気もステロイドを点滴する「ステロイドパルス療法」や、血漿(けっしょう)を健常なものに入れ替える「血漿交換療法」などが行なわれます。
寛解期においては治療法が異なります。多発性硬化症では、「インターフェロンβ」や冬虫夏草(とうちゅうかそう)というキノコの一種から作られた「フィンゴリモド」が用いられます。視神経脊髄炎では、「経口ステロイド」や「免疫抑制剤」の内服を行ないます。ちなみに視神経脊髄炎においては、インターフェロンβやフィンゴリモドを使用すると、かえって再発率が高くなるといわれています。
症状が多彩であり、どういう症状に注意すればよいかは、一概にはいえません。
ただ、多発性硬化症も視神経脊髄炎も、脳梗塞ほど突発的ではありませんが、比較的急に症状が現れます。視力障害、麻痺、しびれなどが急に起こり、どんどん悪化してくるときは、早めに病院を受診してください。早期に治療を行なうことで、後遺障害を少なくすることができます。
多発性硬化症も視神経脊髄炎も不明な点が多く、予防法はまだ確立されていません。
ただ、多発性硬化症に関しては、人種間に発症率の差が見られるほか、高緯度の地域に移り住むと発症率が高くなるといわれています。そのため、日照時間などとも関連するのではないかといわれていますが、はっきりとしたことは分かっていません。
ただし、再発予防に関しては、医学解説の項目で解説した薬を使用することで、再発率を減らすことができます。そのため、発症したら治療を継続していくことが重要です。
解説:辻井 智明
松山病院
神経内科
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