社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2020.03.18

三叉神経痛

trigeminal neuralgia

勝田 俊郎 (唐津病院 脳神経外科部長)

三叉神経痛はこんな病気

頭蓋骨の内側にあるくも膜と脳の表面を覆う軟膜との間には、くも膜下腔というスペースがあり、脳脊髄液を満たしています。くも膜下腔の中では、下の図のように脳神経や太い脳血管が走っています。脳神経と脳血管がくも膜下腔でぶつかり合うことはまれなことではありませんが、たまたま神経の弱い部分に当たったり、当たり方が強かったりすると、非常に強い痛みを引き起こすことがあります。

三叉神経はその名の通り、三つの枝(眼神経、上顎神経、下顎神経)に分かれています。それぞれが、おでこから眼球まで(第1枝領域)、下まぶたから頬・上唇・上の歯茎まで(第2枝領域)、下唇から下顎・下の歯茎・舌の半分(第3枝領域)の感覚をつかさどっています。

この三叉神経に脳血管が当たることによって上記の領域に起こる非常に強い痛みが、三叉神経痛です。
次のような特徴があります。

・顔の片側が発作的に激しく痛むが、痛みのないときには顔面の感覚が鈍くなっているようなことがない
・食事や洗顔・歯磨きなどで誘発されることが多い
・鼻の脇や口の周囲など、触ると決まって痛みを誘発する場所(トリガーゾーン)がある

三叉神経痛自体は直接命にかかわるものではありませんが、「この世で感じる最もひどい痛み」ともいわれており、苦痛に耐えきれず自殺する人もいるほどです。

三叉神経痛の原因

神経は電気信号によって情報伝達する、絶縁体に包まれた電線に例えられます。血管が当たって強く圧迫され続けると絶縁がうまくいかず、「ショート」のような現象を起こすことがあります。この状態が痛みとして大脳に認識されます。
ただし、血管が当たっていなくても周囲との癒着などで神経の走行がゆがめられていることが原因の場合もあります。痛みの発生のメカニズムは完全には解き明かされていません。また、まれに腫瘍など、別の病気により神経痛を生じている場合もあります。

三叉神経痛の治療

カルバマゼピン(抗てんかん薬)がある程度効くとされています。薬が効いている間はよいのですが、痛みがひどくなって量を増やしていくとふらふらするといった副作用が出ることもあり、はじめから薬が合わず使えない人もいます。
このような場合には、血管と神経を移動させる手術を検討します。手術なので低いながらある程度の危険性はありますが、これが唯一の根治的治療です。
三叉神経を圧迫している血管を神経から離し、再び神経を圧迫しない場所に固定します。

手術以外には、神経ブロックという、神経を麻酔薬で麻痺させる、または破壊する治療があります。麻酔薬での治療は顔や口の中の感覚が鈍くなるという欠点があり、またいずれは効果が切れる時期が来ます。神経を破壊する方法は長期的な効果が得られますが、感覚の麻痺が長く続き、まれに耐えがたい嫌なしびれや痛みが生じることもあります。
ガンマナイフ治療という、ガンマ線を照射して神経を破壊する放射線治療法もあります。しかし、効果が出るまでに数日から数カ月かかります。また、まれに嫌なしびれ・痛みが生じることがあるため、ほかの治療ができない場合の最終手段と考えたほうがよいでしょう。

「早期発見」というよりは、「早期診断」が重要です。そうでないと、つらい期間をいたずらに長くしてしまいます。
顔面や歯茎の痛みなので、脳神経外科や脳神経内科の領域とは考えにくいかもしれません。虫歯が原因だと思って歯科を受診し、何本も抜歯した後に脳神経外科を紹介されたケースもあります。
三叉神経痛には「普段はしびれた感じもないのに、急に激痛が走る」などの特徴があります。こういった病気があることを知り、症状が出た場合は三叉神経痛を疑ってみることも重要です。

加齢とともに動脈硬化が進んだ脳血管は、長くなり曲がりくねってくることがあり、脳神経を強く圧迫する要因の一つとなります。そのため、動脈硬化を抑えるような食生活・生活習慣を心がけることが、ある程度予防につながる可能性はあります。しかし、三叉神経痛そのものの確実な予防法はまだ分かっていません。

勝田 俊郎

勝田 俊郎
唐津病院
脳神経外科部長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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