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2017.01.31
頭痛そのものが病気である一次性頭痛に分類されている病気です。現在頭痛の診断は『国際頭痛分類第3版β』(国際頭痛学会作成による最新の分類・診断基準を日本頭痛学会が翻訳、出版している医学書)を用いて行ないますが、第2版まで群発頭痛は大項目の一つに分類されていました。「三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)」の中に分類されているのは第三版βからです。
一次性頭痛として有名な片頭痛は、片側・両側に頭痛が出ます。対してTACsは通常一側性で、同側に著明な頭部副交感神経系の自律神経症状(以下に主な症状を記載)を伴う特徴があります。
頭部副交感神経系の自律神経症状
・結膜充血
・流涙
・鼻閉、鼻漏(鼻づまり、鼻水)
・前頭部および顔面の発汗・紅潮
・耳閉感
・縮瞳(瞳孔の縮小)
・眼瞼下垂、眼瞼浮腫(まぶたが上がりにくい、まぶたが腫れている)
・落ち着きのなさや興奮した様子
頭痛は重度で、眼窩部・眼窩上部・側頭部のいずれか1つ以上の部位に発現し、15〜180分間持続します。発作頻度は1回/2日〜8回/1日で、数週間〜数カ月間頭痛が続く群発期と、数カ月間〜数年間頭痛がない寛解期が繰り返されます。慢性化すると寛解期がなくなります。男性に多いとされていて、発症年齢は通常20〜40歳です。
群発頭痛の部位
片頭痛と群発頭痛の性状に類似点があるため、頭痛頻度が少ない場合は片頭痛と診断されることがあり注意が必要です。
片頭痛は予防療法が功を奏しますが、群発頭痛は効果が期待できないことが多くなります。
鑑別のポイント
①頭痛の発作持続時間が片頭痛に比べて短い
②自律神経症状を伴う
③寛解期がある
④頭痛発作時は興奮して歩き回ることが多い(片頭痛では暗く静かな場所で横になることが多い)
⑤痛みは同側に繰り返される
予防について十分なエビデンス(検証結果)のある研究はなされていません。アルコール、ヒスタミン、ニトログリセリンにより発作が誘発されることがあり、これらを排除することが有効な場合があります。
実臨床では喫煙やアルコール摂取の習慣、鼻炎・副鼻腔炎の既往がある場合が多い傾向があるため、対処することで予防できる可能性があります。
発作急性期の有効な治療法は確立されていませんが、海外ではトリプタン製剤、酸素吸入などの効果が検証されています。
予防療法も同様に有効なものが少なく、カルシウム拮抗薬、抗てんかん薬投与の試みがなされていますが、効果に一定の見解が得られていません。今後注目されている治療として脳深部刺激療法、翼口蓋神経節刺激療法、後頭神経刺激療法などのニューロモデュレーション(神経調節療法)が海外では試みられています。
解説:田中 寿知
済生会松山病院
脳神経外科部長
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