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2013.10.07
片頭痛はズキズキと脈打つような感じ(拍動性)の頭痛が繰り返し起こるものですが、脳の検査をしても異常は見つかりません。片頭痛の症状は15歳以上の患者さんでは、頭痛全体の約8.4%を占めます。また、特に10~50歳の女性に多くみられる症状です。
片頭痛では数時間から1~2日前、これから何となく頭痛が起こりそうな気がする「予兆」と呼ばれる症状が5人中1人(約20%)の割合でみられます。具体的には、情緒不安定になる、気分がすぐれない、あくびを繰り返すなどさまざまなものがあります(図1参照)。
図1. 片頭痛の経過と服薬のタイミング
また、片頭痛には2つのタイプがあり、前兆のないものと前兆のあるものが知られています。前兆のない片頭痛は、ズキズキとする頭痛が数時間~3日間持続し、多くは頭部の片側(約60%)で起きますが、両側(約40%)に痛みが出る場合もあります。階段の昇り降りなど、日常的な運動で症状が悪化し、吐き気や嘔吐(おうと)症状が出たり、もしくは光と音に対して過敏になったりします。このような頭痛が何度も経験される場合、通常5回以上繰り返すと片頭痛と診断されます。
一方、前兆のある片頭痛は視野が欠けたり(半盲)、ギザギザした光が出る閃輝暗点(せんきあんてん)などの症状があります。これらが4分~60分間程度持続した後に、ズキズキとする頭痛が出現し、半盲や閃輝暗点などの前兆は頭痛が始まる前に消失します。こうした発作が2回以上経験される場合、片頭痛と診断されます。
どうして片頭痛が起こるのか(発症機序/はっしょうきじょ)に関して、まだ詳しくは解明されていませんが、脳の血管がなんらかの原因で収縮し、続いて血管周りの神経が刺激され、拡張することにより頭痛が起こるといわれています。ストレスなどが原因で三叉神経(さんさしんけい)から「痛み物質」が放出され頭痛が起こる、三叉神経血管説という考えも有力となっています。
1 頭痛発作時の対処法
光や音の刺激を避け、暗く静かな場所で横になって休むことが必要です。軽い頭痛なら数時間の休養や睡眠をとることで治る場合もあります。痛みが強いときは、痛む部分に冷却シートや冷たいタオルなどを当てて冷やすようにすると、痛みがいくらか和らぐこともあります。
2 薬物治療
症状から日常生活に支障が出る場合は、内服薬を用いての治療になります。軽度の片頭痛であれば、通常の鎮痛薬かあるいは市販薬が有効です。
頭痛の程度が強い場合は、片頭痛専門治療薬として「トリプタン製剤」の有効性が知られています。トリプタン製剤は、片頭痛の原因となる頭の血管に作用して、異常に拡張した血管を収縮させるとともに、三叉神経に作用して「痛み物質」が出るのを防ぎ、血管の拡張と炎症を鎮める薬です。現在、国内では5種類のトリプタン製剤があり、患者さんの60%以上に有効性が認められます。各薬剤により、効いてくるまでの時間(効果発現時間)や、効果の持続時間は若干異なります。頭痛の発作中はいつ服用しても効果がありますが、頭痛がひどくなってから服用すると効果が半減するため、早めの服用がより効果的です。
前ぶれ | 頭痛が起こる直前に視野の半分が欠けて見えなくなる半盲や、視野の中心付近にギザギザとしたジグザグの光が見えて動いていく閃輝暗点という前兆となる症状が現れます。 |
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痛み方 | 頭の片側や、また時として両側に、ズキズキと脈打つような強い痛み(拍動性頭痛)が繰り返し起こります(図2参照)。 |
頻度 | 標準では月に1~2回、多い人だと週に1~2回の頻度で発作的に起こります。 |
持続時間 | 数時間から長くても3日間持続します。頭痛の起こり方の頭痛発作と次回の頭痛発作の間(間歇期)は無症状で頭痛はなく、発熱もみられません。 |
痛みの 増悪因子 |
体を動かしたり、入浴したりすると、頭痛がひどくなる傾向があります。また、睡眠過多、睡眠不足やストレスなどの精神的影響を受けやすいです。 |
検査 | 頭部CTやMRI検査では異常がみられません。 |
遺伝 | 血縁者(例.母や父)が片頭痛持ちであることが多いです。 |
女性の 場合 |
生理の2、3日前から頭痛が持続するような、生理に関連した頭痛の多くは片頭痛であり、若い女性の片頭痛では60%が生理と関係しています。生理に関連した片頭痛は頭痛である場合、持続時間が長い傾向があります。 |
図2. 頭痛の現れ方と特徴
●注意点
1) 片頭痛と間違われやすい頭痛として緊張型頭痛があります。緊張型頭痛は誰にでも起こる可能性があり、首や肩の筋肉のこりや緊張が原因とされているものです。頭痛というより、両側頭部の圧迫感または締め付け感(ズキズキする頭痛ではない)が症状の主体です。症状の持続は片頭痛より長く、3日~数カ月に及ぶ場合もあります。
2) 頭痛に、以下のような特徴がある場合は命に関わる危険なものもありますので、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。
・前ぶれなく突然頭痛が起きた
・今までの頭痛とは全く違った感じの痛みがある
・今までの頭痛の中で一番痛い
・頭痛だけでなく、発熱や手足が動かしにくい、言葉が出ないといった他の症状を伴う
・意識がもうろうとする。けいれんを起こしこともある
1 片頭痛の予防
片頭痛を予防するためには、以下のような頭痛を引き起こす要素を避けることが大切です。
過労や ストレス |
仕事が終わってホッとした後や悩みから解放された後など、それまで過度の緊張で収縮していた血管が拡張すると頭痛が起こりやすい、といわれています。普段からストレスをため込まないように心がけることが重要です。 |
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食事の量 | 片頭痛は空腹時に起こることが多いため、食事時間を守り、きちんと食事をとるようにしましょう。 |
食事内容 | 片頭痛はチョコレートや赤ワインなどの飲食物で誘発されるので、これらの飲食は避けるようにしましょう。 |
睡眠 | 睡眠不足のほか、逆に睡眠のとり過ぎでも片頭痛が起こりやすくなります。休日も朝寝をしないなど寝過ぎに注意して、規則正しい生活を送ることが大切です。 |
女性の 生理現象 |
生理前・生理中などに片頭痛発作が起きた場合は、この期間に合わせて予防薬を服用することも必要です |
外出 | 日ざしの強いところではサングラスをかけ、混雑した場所を避け、換気、騒音や温度差などにも注意しましょう |
旅行 | 多くの要素が病因となることが多いため、体調を整え、計画的に行動しましょう |
2) 予防的投薬の目安
以下のようないくつかの状態に当てはまる場合は、片頭痛の予防薬が必要となります。鎮痛薬を飲み過ぎないためにも医師に相談しましょう。保険適用のある片頭痛予防薬として、カルシウム拮抗薬(塩酸ロメリジン)やある種の抗てんかん薬(バルプロ酸)があります。
・頭痛発作の頻度が増加している場合(1カ月に2~3回以上が目安です)
・頭痛発作が重症で、日常生活に支障が生じる場合
・通常の発作時に治療しても効果が得られない場合
・副作用により、発作時の治療薬使用が制限されてしまう場合
・持病(基礎疾患)があるため、発作時の治療薬使用が禁止されている場合
・前兆が長びく場合
・精神的な不安が大きく、発作の症状に耐えられない状態であるか、発作に対応できない場合
解説:坂井 利行
済生会松阪総合病院
神経内科部長
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