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2019.10.31

大人に知ってほしい。子どもだって頭痛がつらい!

自分の子どもや生徒が頭痛を訴えたとき「どうせ仮病でしょ」「熱がないなら大丈夫」などと思っていないでしょうか。中には大人に理解されないまま、痛みで学校に行けなくなるほど苦しんでいる子もいるのです。福井県済生会病院で小・中学生のための「こどもの頭痛外来」を担当する小児科主任部長・岩井和之先生に、大人が知っておくべき子どもの頭痛について聞きました。

周囲に痛みを伝えにくい「頭痛」

頭痛を訴える小・中学生の子どもを診察していると、付き添いの保護者から「子どもでも頭痛ってあるの?」「痛み止めを飲んでおけば大丈夫じゃないの?」という声をよく耳にします。もちろん子どもでも頭痛を起こしますし、薬が効きにくい場合もあります。しかし、保護者や教師など周囲の大人がそれを理解していないため、子どもの苦しみに気づけないことが多いようです。

頭痛は、周囲から見て本人のつらさが伝わりにくい症状です。例えば腹痛は、お腹が張っていたり、ある部分を押すと激痛で顔をしかめたりしますが、頭痛は頭を触っても痛みの程度が分かるわけではありません。そのため、仮病を疑われたり、薬を飲んで休んでいれば治ると思われたりしがちです。

当院(福井県済生会病院)では、月に何度も激しい頭痛があるため学校を欠席・早退したり、スポーツへの参加をやめざるを得なかった子どもたちを診てきました。処方された薬も効かず、いくつも病院を回ってから、当院を受診する子どももいました。

どれほどの子どもが頭痛を抱えているのでしょうか。東京都多摩市の小中学生に対する頭痛(片頭痛、緊張型頭痛)の有病率調査の結果を見てみましょう。

小児片頭痛の有病率

小児緊張型頭痛の有病率

学校の欠席状況

  学校を休んだ経験あり 年間欠席日数 欠席理由
片頭痛あり 64.6% 5日以上  33.4%
30日以上 1.6%
発熱 74.7%
頭痛 55.8%
緊張型頭痛あり 62.7% 5日以上  26.4%
30日以上 2.0%
発熱 69.2%
頭痛 38.0%
頭痛なし 53.8% 5日以上  23.0%
30日以上 0.4%
発熱 76.2%
頭痛 18.3%

出典:桑原健太郎「東京都多摩市小中学生における頭痛実態調査」(東京都医師会)

例えば、中学3年生では男子の約5人に1人が、女子の約4人に1人が小児片頭痛を持っています。また、頭痛持ちの子はそうでない子と比べ、学校の欠席理由に頭痛を多く挙げています。さらに、受験を控える小学6年生・中学3年生や、小学校から大きく環境が変わった中学1年生では有病率が高くなっています。

子どもの頭痛の特徴

頭痛は、頭痛の原因となるほかの病気がない「一次性頭痛」と、脳や目などのほかの病気が原因の「二次性頭痛」の大きく二つに分類されます。子どもに最も多いのは一次性頭痛に分類される「片頭痛」で、同じく一次性頭痛の「緊張型頭痛」もよくみられます。それぞれの特徴は以下の通りです。

片頭痛と緊張型頭痛

  片頭痛 緊張型頭痛
持続時間 1~72時間 30分~7日
痛みの特徴 ズキンズキン
拍動性(脈打つ)、疝痛せんつう(一定の時間をおいて周期的に痛む)
締めつけられる
重い
痛みと開始と終了 はっきりしている 不明瞭でだらだら続く
痛む場所 片側もしくは両側 両側
痛みの強さ 中程度~重度 軽度~中程度
頭痛に伴う
症状
動作により悪化
悪心(吐き気)・嘔吐
光・音過敏
首・肩のコリ
食欲不振
頭痛の頻度 2週間~1カ月に1回 ほぼ毎日、月に15日
頭痛薬の効果 あり なし
対処法 氷で冷やす
暗い部屋・安静
温める

片頭痛は薬が効きやすい一方、緊張型頭痛は原因や効く薬がはっきり分かっておらず、治しにくい病気です。頭痛持ちの子どもの大半にみられるのは片頭痛ですが、緊張型頭痛を併発していることもあります。このような場合は薬が効きにくく、痛みがだらだらと続くので厄介です。

また、風邪を引いたときにも頭が痛むことがありますが、風邪による頭痛は風邪が治ると治まります。しかし、片頭痛や緊張型頭痛は風邪の有無にかかわらず何度も繰り返し起こるのが特徴です。

頭痛が長期間繰り返し起こり、市販の痛み止めも十分効かない場合は医療機関を受診しましょう。症状にあった薬の処方や、必要に応じて予防療法や生活指導を受けることができます。

周囲の大人が子どものつらさを理解することが大切

子どもに限らず、頭痛が起こりやすい人は、性格が生真面目であったり頭が敏感なためストレスが頭の痛みとして現れたりという特性を持っています。保護者の方は「なぜ自分の子だけ」と思わず、その子個人の性質であると理解してあげましょう。
その上で、大人に知ってもらいたいポイントを二つ紹介します。

子どもは自分の痛みをうまく説明できない

子どもは大人と比べて表現力に乏しいため、自分の痛みをうまく説明できません。前述の通り、頭痛は他人に分かりにくいものです。もし、子どもが「頭が痛い」と言ってきたら、まずは信じてあげてください。仮病であれば自分の都合のいいときにしか痛いと言いませんが、そうでない場合は数週間にわたり繰り返し痛みを訴えます。最初から仮病だと疑ってかかられると、「本当に痛いのに信じてもらえない」ことから、子どもは傷つきます。

子どもは頭痛の原因がストレスだと自覚できない

大人であれば「仕事が忙しいせいで頭が痛いな」など、自分が置かれている環境・ストレスと症状を結びつけて考えられます。しかし、子どもにはそれができません。例えば、受験生が頭痛を訴えたら、周囲の大人は勉強のストレスが頭痛の原因だと考えるでしょうが、本人がピンと来ない場合があります。「ストレスにさらされると頭が痛くなる」という経験が乏しいために、実感できないのだと思われます。高校3年生くらいでようやく認識できるようになっていくので、大人はそのことを理解した上で子どもと向き合いましょう。「頭痛の原因はストレスだ」と言って終わるのではなく、頭痛の背景にある心理的な課題や生活環境の問題に、子どもと一緒に取り組んであげてください。

「頭痛ダイアリー」で頭痛のパターンを把握しよう

いつ、どのように、どんな状況で頭痛が生じたかというパターンを記録しておくと、痛み始めるきっかけが分かり、改善につながる気づきを得られるかもしれません。そこでおすすめなのが、「頭痛ダイアリー」です。
毎日の頭痛を「薬の有無」「時間帯」「日常生活への影響度」といった観点から記録できるので、例えば午前中や雨の日に痛むことが多い、部活の試合前日は重い頭痛があるなど、親子で頭痛の傾向を分析しやすいでしょう。医療機関を受診する際も記録があると、頭痛の特徴やどの薬が効いたかなどが分かりやすく、よりよい治療に役立ちます。上記のホームページから無料でダウンロードできるので、ぜひ使ってみてください。

解説:岩井 和之

解説:岩井 和之
福井県済生会病院
小児科主任部長

※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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