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病院が嫌いな子どもには、痛いことよりも何をされるのか分からないことが怖い子どもが多いといいます。子どもの不安を軽減するために大人は何ができるのでしょうか。医療を受ける子どもを

病院嫌いにさせない!子どものためにできること

病院が嫌いな子どもには、痛いことよりも何をされるのか分からないことが怖い子どもが多いといいます。子どもの不安を軽減するために大人は何ができるのでしょうか。医療を受ける子どもを"遊び"で支援するホスピタルプレイスペシャリスト(HPS)である、静岡済生会総合病院の望月ます美さんに、子どもの不安を取り除く方法を解説していただきます。

ホスピタルプレイとは?

医療を受ける子どもを"遊び"で支援するイギリス発祥の取り組みです。子どもが経験する検査や処置、手術などについて、正しい情報を分かりやすく伝えることで、誤解を解き恐怖や不安を軽減し、自信や自己肯定感が持てるような経験となるように支援しています。病院を嫌いになってからではなく、嫌いにならないように支援するのが目的ともいえます。また、治療前に病院のプレイルームで遊ぶことで、子どもに「早くプレイルームで遊びたい」と思わせ離床を促す効果も期待できます。
ホスピタルプレイスペシャリスト(HPS)とは、ホスピタルプレイを用いて小児医療チームの一員として働く専門職です。イギリスで取得するほかに、日本国内では、平成19年度に静岡県立大学短期大学部でホスピタルプレイスペシャリスト養成講座が始まり、看護師、保育士、教員、臨床検査技師、薬剤師、保健師、リハビリスタッフなどさまざまな職種の人が資格の認定を受けています。類似の資格に、アメリカ合衆国で生まれたチャイルドライフスペシャリスト(CLS)、HPSやCLSをモデルに2011年にわが国で誕生した子ども療養支援士があります。

ホスピタルプレイ

ホスピタルプレイ

子どもが病院を嫌う理由

「病院に行くよ」と言われると、子ども達はどんな思いを抱くでしょうか。「注射とか検査かな」「何か悪いことしたかな」などと緊張し、戸惑ってしまうのではないでしょうか。それは病院が日常とは違う場所であり、痛い思いをした場所だったりするからという理由だけなのでしょうか。
病院に関わる子どもたちにどんなことが嫌だったか聞いたところ、「採血などの痛い検査は嫌」という意見はありましたが、それよりも「急な検査や、次に何が起こるのか分からないことのほうが嫌だった」との答えが多く聞かれました。「こんなことがこの順番で起こるよ」と事前に知っていれば、気持ちの準備ができて乗り越えられることも多いと思います。家族への説明だけでは、子どもには十分に伝わらず、かえって誤解してしまう場面もみられます。いきなり検査や処置となると、何をされるのかわからない恐怖から暴れて嫌がり、おさえつけられたりすると、たとえ5分でもとても長い時間に感じます。
治療や検査に臨む子どもには、①今はこの治療が必要なこと、②動かないでほしいこと、③(病院の人たちを含めた)みんなが応援していること、などを分かるように伝えることで、子どもながらに「嫌だけれど乗り越えよう」という気持ちにつながります。「できた」「大丈夫だった」「がんばって乗り越えた」という経験は、次回病院を訪れたときに、恐怖心が和らぐことにもきっとつながるはずです。

子どものストレス軽減のためにできること

不安を取り除く支援の第一歩として、子どもと親しくなりましょう。子どもと親しくなり、心を開いてもらえると、プレパレーション(これから経験する検査や処置について知らせ心の準備をすること)の受け入れもスムーズです。また、嫌な検査や処置も自分から乗り越えようとする気持ちへとつながりやすくなります。
具体的には、次のようなことを意識し、実践してみましょう。

  • 1.子どもをよくみる
    子どもは困っていることを言葉で伝えられないかもしれません。不安感や不快感、眠気、空腹など、泣いている原因はさまざまです。子どもの「声にならない声」や思いに気づき、言葉にしてあげられると、安心できることも多いのです。

  • 2.子どもと大人は違うことを理解する
    子どもは大人を小さくした存在ではありません。"今"が大事だったり、気分や感覚に左右されがちだったり、時間の流れの感じ方が大人と違っていたりします。大泣きして嫌がっていても、ほんのちょっとの関わりで気分が変わり、やる気満々となることもあります。年齢や成長発達、それまでの経験など個々に合わせた支援が必要です。

  • 3.安心できる環境や信頼関係をつくる
    「ここにいてもいいんだ」「大切にされているんだ」という思いや自己肯定感が持てるように関わることが大切と考えます。子どもがスタッフへ気軽に質問できる雰囲気づくりも大切です。

  • 4.子どもに伝えるときはゆっくり一つずつ
    子どもと話すとき、しゃがむなどして目線を合わせると伝えやすくなります。知ってほしいことだけを一方的に説明するのではなく、話が理解できているか、子どもが知りたいことは何かを確認しながら話しましょう。また、問いかけ方も要注意です。子どもは「わかった?」と聞かれると、理解できていなくても「わかった」と答えます。「質問ある?」と聞くと、大人とは違う意外なところで疑問を持ち、驚かされることがあります。
    また、一度にたくさんの情報があると、子どもの中で処理しきれない場合があります。一つひとつ丁寧に伝えるように心がけましょう。

静岡済生会総合病院では、遊びを通じて子どもと信頼関係を築き、ぬいぐるみやおもちゃを用いたプレパレーションを行なっています。採血やMRI、手術、内服など子どもが経験することの多い場面ごとに、カードをめくりながら治療や検査の手順を一つひとつ確認するプレパレーションブックを作って説明しています。人形や写真、タブレット、実物の治療用具も使うと子どもはイメージしやすくなるようです。治療風景を再現したおもちゃやぬいぐるみを使ったり事前に見学したりして、自分が受ける治療や検査を知ってもらいます。

プレパレーションブック
プレパレーションブック

MRIを模した木のおもちゃ
MRIを模した木のおもちゃ

パッドを当てたぬいぐるみ
パッドを当てたぬいぐるみ

通院中・入院中のお子さんを持つ親御さんへ

子どもは病院に行くと聞いただけで緊張し、萎縮してしまっているかもしれません。「病院で病気やけがを治してもらう」「予防接種をする」など、十分理解できていなくても何をするのか話してあげてください。「嫌なことかもしれないけれども大切なんだよ」と伝えることで、意外と納得してくれるものです。
また、子どもにうそをつかないようにしましょう。例えば、予防接種で「痛くないよ」と言われたのに痛かったら、次回は行きたくなくなります。信頼関係を崩さないためにも、「痛かったら泣いてもいいよ」「好きなことを考えるとか、大きく息をフーってすると痛いのは少しになるよ」 などと伝えてみてください。
ほかにも、困っていることや分からないことがあれば、医師や看護師、HPSなど医療者に遠慮せず相談してください。インターネットで調べてかえって混乱したり、自己判断したりするケースもみられます。同様のことで困っている人も多く、医療者もすぐに答えてくれることもあるので、解決への近道といえます。
最後に、できたことをいっぱい褒めてあげてください。子どもは一人で椅子に座れたこと、名前が言えたことなど、小さなことでも褒めてもらうと自信となり落ち着くことができます。

病院で取り入れている遊び

わらべうた(『いっぽんばしこちょこちょ』)(『げんこつやまのたぬきさん』)、しりとり、クイズなどは、道具を用意する必要がなくベッド上でも楽しめます。また、小児病棟のプレイルームには、本、絵本、ままごとグッズ、積み木、ブロック、車、レール、ボードゲーム、折り紙、マジックなどたくさんのおもちゃが用意されています。自由に選べるようになっていて、ベッド上にも貸し出しをしています。そのほかに、入院中の子どもたちは、医師の許可が出てプレイルームや病棟テラスで遊ぶのを楽しみにしています。
ティーンエイジャー(10代)用の部屋もあり、勉強、楽器の練習、マンガを読むなど、さまざまな目的で利用されています。

たくさんのおもちゃが用意されているプレイルーム
たくさんのおもちゃが
用意されているプレイルーム

医療風景を示したメディカルツール
医療風景を示したメディカルツール



望月 ます美

解説:望月 ます美
静岡済生会総合病院
ホスピタルプレイスペシャリスト(HPS)

※当欄に執筆した医師の所属・役職は、異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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