済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
一般の方の心身の健康や暮らしの役に立つ情報を発信中。「症状別病気解説」をはじめとして、特集記事や家族で楽しめる動画など、さまざまなコンテンツを展開しています。
2018.03.15
運動の命令を伝える神経(運動ニューロン)は、脳から脊髄を介して筋肉を支配しています。筋萎縮性側索硬化症はこの運動ニューロンがダメージを受けることで筋肉が少しずつ痩せ、手足を動かすことが困難となり、全身の麻痺に至ります。さらに舌、呼吸筋や咽頭・喉頭部の筋群も侵され、会話、物の飲み込み、呼吸も次第に不可能になっていく進行性の病気です。脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症など類縁の病気をまとめて運動ニューロン疾患と呼ぶこともあります。
根本的な原因はまだ不明です。しかし、神経の変性していく過程に、ある種のたんぱく質がかかわっていることが最近わかってきて、急速に研究の進んでいる分野の一つです。ごく一部では、家族内で同じ病気が発症する場合もあります。病気がかなり進んでも、目の動きや身体の感覚、膀胱直腸など自律神経系には症状が出ないとされています。
診断には脳神経内科医による神経学的診察に加え、他の類似した病気との鑑別のために、脳や脊髄を中心としたMRIなどの画像検査、神経の伝わり方や筋肉の機能を調べる筋電図などの生理学的検査が行なわれることが多いです。
発症年齢は中年期(40~50歳)以後に多いとされます。手足の左右いずれかから、ゆっくりと症状が出てくることが多く、他の脳神経内科の病気や、場合によっては整形外科等の病気に酷似することもあります。
2~3年経過すると筋肉の痩せが目立ち、さらに力が入らなくなるなどの症状が目立ってきます。「医学解説」でも述べたように、横隔膜などの呼吸をつかさどる筋肉が障害されると呼吸不全に至り、口や喉の筋肉が侵されると、発声や物の飲み込みが困難になります。これら症状の出現の順番や組み合わせのパターンはさまざまです。
はっきりした予防の方法はまだわかっていません。遺伝的背景で発症する場合は小児期から発症することがありますが、典型的な筋委縮性側索硬化症とは若干異なる症状を呈することが多いようです。
現在では症状を軽減し、進行を少しでも遅らせるための内服薬や注射薬が出てきて、一世代前の状況とは大いに異なります。しかし、現時点で病気を根本的に治療するにはまだ不十分で、研究が進行中です。
咽頭の筋力低下で物の飲み込みが困難になった場合は、栄養不足を防ぐために、胃瘻(腹壁を切開して胃内に管を通し、食物や水分、医薬品を投与するための処置)をはじめ何らかの無理のない栄養管理が重要になります。呼吸困難がある場合は、非侵襲的な(生体を傷つけないような)呼吸管理を行ない、日常生活における生活の質を少しでも維持することを心がけます。
約半数近くに認知症の一つのタイプ「前頭側頭葉変性症」が合併することが近年明らかになりました。自発的な言葉の低下や無為、無気力などの症状を呈したり、行動障害として非協力的、周囲への無配慮、相手や自分に対して抑制が効かなくなる、合理的とは思えないことに強く固執した言動を繰り返す等があり、介護に困難が伴うこともあります。
上記で述べた、栄養や非侵襲的呼吸管理がいよいよ困難となったときは、さらに気管切開をして人工呼吸器を永続的に装着するかどうかを選択するだけではなく、多様な面から予後の厳しさも併行して考えていく必要があります。厚労省特定難病に指定されているため、重症度と所得の程度によって医療費の減免措置を受けたり、介護保険や身体障害者福祉法の適用で援助を受けることも可能です。患者さんご本人や家族だけが抱えて悩むのではなく、医師や看護師、リハビリテーションスタッフ、薬剤師、ケアマネージャをはじめ介護・福祉スタッフ、保健師、ケースワーカー等多くの専門職との協働が大切です。
解説:松谷 学
済生会小樽病院
神経内科・副院長
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