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2018.12.27

発達障害の子ども「発達でこぼこ」との接し方

発達障害の子ども「発達でこぼこ」との接し方

「発達障害」という言葉をよく耳にします。テレビや新聞で話題に上る機会も多くなり、患者数が増えているのかと思いきや、実はそうではないのです。また、「障害」というと「できない」というイメージがありますが、子どもたちを見ていると「発達でこぼこ」と表現したほうがしっくりきます。親や教師は「発達でこぼこ」の子どもとどう接してあげればよいのか、解説します。

身近になった「発達障害」の特徴

発達障害とは、生まれつき脳機能の発達にかたよりがあり、コミュニケーションや想像力を働かせることなどが苦手である障害のことです。発達障害でない人と比べ、苦手なことが多い反面、得意なことは人並み以上にできるため、一般的な「障害」のイメージとは異なります。得意・苦手の差が大きいことから、「発達でこぼこ」と呼んだりもします。
発達障害には、大きく①自閉症スペクトラム、②注意欠如・多動性障害(ADHD)、③学習障害があります。

発達障害の子ども「発達でこぼこ」との接し方

当院(滋賀・済生会守山市民病院)の相談内容で多いのは、小学生では授業中の立ち歩き、忘れものが多いといったADHDの特性を持つ子に関するものです。対人関係の悩みで、衝動性が強く友達に手を出してしまった、場の空気が読めず周囲と溝ができてしまうという相談もよく受けます。

詳しくはこちら 症状別病気解説「発達障害」

知的レベルが高い子どもだと症状を知能でカバーして乗り切れるため、周囲に気づかれないまま大人になるケースもあります。「ちょっと変わった人」といった目で見られることが多いため、精神的な苦労が多くなるというのも特徴です。一方、知的な成長がゆっくりである子どもだと、幼少期から運動発達や言語発達もゆっくりで、親から気づいてもらいやすいでしょう。
テレビ番組の特集でも取り上げられるなど「発達障害」が身近になりましたが、発達障害の子どもが増えたわけではないと考えています。病気としての認知度が高まったことにより、保護者が気になって医療機関を受診して診断されたり、自分が発達障害である親が自分の子どももそうでないか疑って早期発見できたりすることが増えたためと思われます。

自分の子どもが発達障害かも?と思ったら

就園前の子どもで、視線が合わない、名前を呼び掛けても振り返らない、1歳半を過ぎても言葉が出てこないといった様子があれば、発達障害の可能性が高くなります。地域の発達障害支援センターに問い合わせたり、保健所の1歳半検診や2歳半検診で保健師に相談したりすることをお勧めします。
就園後で気になる症状があれば、まずは園や学校の先生に相談しましょう。園・学校や家での様子から受診が必要か相談に乗ってもらえます。医療が必要だと判断されれば、医療機関を紹介してもらいます。幼稚園や保育園であれば、「加配制度」を活用できるかもしれません。これは、担任の先生に加えて発達障害や言葉の遅れなどがある子どもに先生をつける制度です。相談体制が整っていない場合は、近くの小児科やかかりつけの医師に相談し、発達障害を診てもらえる医師を紹介してもらうのもよいかもしれません。

※相談フローの図

周囲の大人ができること

発達障害の子どもに対して大人はどう接してあげればよいのでしょうか。親・保育士・教師に共通するポイントは、子どもに寄り添って理解してあげることです。まず、不要に叱らないようにしましょう。例えば大泣きしている子どもがいたとして、その状態で「泣き止みなさい」と叱ってもその子には届きません。大人が大きな声を出すと泣き出すというように、日頃からどういう場面で泣くかということを把握して、原因を考えてあげましょう。友達とけんかしたときも、他の子どもや兄弟の前ですぐ叱るのではなく、子どもと二人になってけんかした理由を聞きましょう。発達障害の子どもは自分で理由を説明できない場合が多く、大人が話を聞き、一緒に考えることが大切です。
特に親は、「子どもの通訳者」になれるように心がけましょう。親は子どもにとって一番身近な存在です。子どもがうまく言葉にできない部分を理解し、園や保健師に子どもの気持ちをうまく伝えてあげてください。
一方で、例えば、子どもが人前で騒いでいるときは静かにさせるためにゲームを許容するのに、家ではゲームを禁止するといった二重規範(ダブルスタンダード)の行動はやめましょう。子どもが混乱しないように、一貫性があるルールを作ることが重要です。

一人で抱え込まないことが大切

親御さんは「うちの子はなぜこんなにできないのか」、学校の先生であれば「私のクラスはなぜこんなにうまくいかないのか」と落ち込んでしまうことも多いかと思います。一人で抱え込まず、周りに相談しましょう。医療機関で発達障害だと診断され、自分の育て方の問題ではなかったのだと、逆にほっとしたという親御さんもいます。発達障害の子どもが通える療育教室で同じ境遇の母親と話せ、元気づけられたという方もいました。家庭、教育現場、医療、行政それぞれの役割があります。医療では、薬の力で子どもの本来の力を発揮させやすくすることも可能です。行政では治療と教育を行なう「療育」で、障害がある子どもが社会的に自立できるよう支援したりもできます。自分だけで解決しようとせず、地域で協力しながら子どもを育てることが大切です。

上羽 智子

上羽 智子
済生会守山市民病院
小児科医長

※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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