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2024.02.28
クラインフェルター症候群とは、男性の性染色体異常によって起こる遺伝性疾患の総称です。病名は初めて報告したアメリカの医師の名前です。
DNAが折りたたまれてできた構造物を染色体と呼びますが、人の染色体は通常であれば44本(22対)の「常染色体」と2本(1対)の「性染色体」で成り立っています。そのうち性染色体については、男性はX染色体、Y染色体を1本ずつ、女性はX染色体を2本持っています。
クラインフェルター症候群は男性にのみ生じる病気で、X染色体とY染色体の性染色体のうちX染色体を過剰に持つことで発症します。最も頻度が多いものはX染色体2本、Y染色体を1本持つタイプで、約80%を占めます。そのほかに、正常パターンとの混合型で一部の細胞だけX染色体が過剰にある「モザイクタイプ」などの病型もあります。
出生男児の600~700人に1人程度の割合で発症するものと考えられています。性染色体の欠失や重複によって引き起こされる「性染色体異常症」の中では、男性で最も多い病気です。
ほとんど症状の出ない人から、多様な症状が現れる人まで幅広く存在します。
手足の長い高身長や女性化乳房などが学童期以降で目立ってきます。停留精巣(精巣が陰嚢内に入っていない状態)や、精巣容積の低下などから、多くは無精子症や不妊症を呈して診断のきっかけになることがあります。体脂肪量が増加する傾向にあり、合併症としてメタボリックシンドロームや2型糖尿病の発症につながります。
基本的に知的障害が現れることはありませんが、言葉発達の遅れや学習障害がみられることがあります。
血液細胞の染色体検査(Gバンド法)により診断します。X染色体の過剰が証明されることで診断に至ります。
性腺機能不全に対してはホルモン検査を行ないます。脳下垂体から分泌されるLHやFSHといった男性ホルモン分泌を促進するホルモンが上昇する一方で、男性ホルモンであるテストステロンは低い値を示します。
それぞれの時期に現れる症状に応じた対応を行ないます。
新生児期〜乳児期
停留精巣に対する精巣固定術、尿道下裂(陰茎の形態異常)に対する尿道形成術など泌尿器科的介入を行ないます。
幼児期〜学童期
言語発達遅滞や学習障害がある場合は言語聴覚療法などの療育、学習支援を行ないます。
思春期〜成人期
性腺機能不全に対して男性ホルモン補充療法、女性化乳房に対する外科療法などを行ないます。不妊症に関して、モザイクタイプは妊娠の可能性が残されており、体外受精など生殖補助医療が適応となります。
思春期に至るまで症状が目立たない場合も多く、成人になるまで気づかれないことも珍しくありません。成人期に不妊症が診断のきっかけになることがあります。
近年、妊婦の血液中に含まれる胎児の染色体を調べる新型出生前診断(NIPT)が普及してきています。ただ、日本医学会が定めた指針の中で、クライフェルター症候群は「分析的妥当性や臨床的妥当性が現時点では十分に確立されていない」としてNIPTの対象外になっています。
しかし、日本医学会の認証を受けていない医療機関で、クラインフェルター症候群を含むさまざまな染色体異常症を検査できる施設もあります。そういった施設で検査を行ない、偶発的にクライフェルター症候群など思いもよらない病気を指摘された際に、妊娠を継続すべきかどうかなど、倫理的な問題に直面してしまう例もみられ始めています。
発症そのものを予防することはできませんが、診断に至った際に、成人期に起こりうる合併症を予防することが重要です。体脂肪量および内臓脂肪量の増加、メタボリックシンドローム、2型糖尿病が代表的な合併症です。また、成人の患者さんで骨減少症(正常な人よりも骨密度が少ない状態)および骨粗鬆症のリスクが高いことも報告されています。
解説:原尾 拓朗
日向病院
小児科 医長
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