済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
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男性にも乳腺(乳汁を作って分泌する器官)はあるため、乳がんになる可能性は誰にでもあります。とはいえ、女性に比べると男性の乳がんはまれな病気です。すべての乳がん患者さんのうち、男性がかかる割合は1%未満といわれています。
米国のデータによると、女性の場合では生涯を通じて8人に1人が乳がんを発症するのに対し、男性の場合は生涯を通じて1000人に1人が発症するとされています。そのくらい大きな差があります。国立がん研究センターの「がん情報サービス」の2021年度のデータによると、日本においてはすべての乳がんのうち男性が占める割合は0.7%。年間でおよそ700人の男性が乳がんを発症していると報告されています。近年では、乳がんを発症する患者数が全体的に増加傾向にあり、それは男性の乳がん患者さんにおいても例外ではありません。
このように圧倒的に女性の患者数が多い乳がんですが、発症する年齢では男女で違いがあるようです。女性の乳がん患者さんは、40代と60代が多くなっています。これに対して、男性の乳がん患者さんの場合はというと、60~70代の人が多くなる傾向にあります。
男性の乳がんの症状には、腫瘤(しゅりゅう)の出現、乳頭変形、乳頭からの出血などがあります。腫瘤は痛みを伴わないことが多いです。女性乳がんと比べて特に症状が異なるわけではありませんが、乳腺が女性より少ないため、腫瘤も多くは乳頭近くに触知されます。また、皮膚潰瘍や、腋窩(えきか)のリンパ節腫脹で発見される場合もあります。
乳がんが疑われた場合は、超音波検査などの画像診断を行ないます。男性は女性と比べて自己検診などを行なっている人が少ないため、女性の乳がんと比べて男性乳がんは進行した状態で見つかることが多く、早期発見が特に重要です。女性と同じく日常的に自分で触れてみて、違和感がないかどうかセルフチェックを
男性の乳がんに対する治療は女性の乳がんの場合と同じです。がんを切除することが可能であれば、手術が行なわれます。病状に応じて、術後の薬物療法も行なわれます。
男性の薬物療法は基本的には女性乳がんの治療法に準じて行なわれます。ホルモン感受性が陽性(ホルモン受容体陽性乳がん)の男性乳がんでは、術後の補助療法としてタモキシフェン5~10年の内服が推奨されています。また、男性であっても女性であっても同じ進行度であれば、治療成績に違いはありません。
先述のとおり、男性にも乳腺があるため、乳がんになる可能性はあります。中でも、家族に乳がん、卵巣がん、膵臓がんなどの患者さんがいる場合は「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」といい、すなわち、がんになりやすい体質をもっている可能性があります。
遺伝カウンセリングを受けた後で、希望すれば採血で診断することができます。もしも遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)であれば、乳がんだけでなく、前立腺がん、膵臓がんなどになる確率も高いことが知られています。そのような場合は、適切な診断を受けることによって、早期にがんを発見するように努めましょう。
最近では、遺伝カウンセリングや遺伝学的検査ができる施設も増えてきています。もし気になる場合は、遠慮なく相談してみてください。
解説:廣吉 基己
兵庫県病院
副院長 がんセンター長
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