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2013.02.01
乳がんは乳腺にできる悪性腫瘍で、わが国では、年間約四万人の女性がかかると推定されています。女性のがんの中で最も罹患率が高く、約二十人に一人が乳がんにかかっています。
乳がんの原因ははっきり分かっていませんが、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌、遺伝などが関係していると考えられています。また、食生活の変化が日本人女性の体に影響を及ぼしているという側面もあります。つまり、日本人女性は以前に比べて初潮年齢が低く、閉経年齢が高くなり、エストロゲンの分泌期間が長くなったことで乳がんが増えていると考えることができます。さらに、出産数が減り、高齢出産が増えるといった傾向もあり、こうしたことが複合的に影響していることが考えられます。
乳がんが進行していくと、がん細胞が増殖して乳管の壁を破って周囲の間質に広がり、リンパ管や血液の流れに乗って、肺や肝臓、骨など乳房から離れた臓器に転移する可能性があります。逆に、他臓器のがんが乳腺に転移することはほとんどありません。
乳がんの治療には、手術療法、放射線療法、薬物療法があります。基本は手術療法ですが、シコリの大きさや、がんの広がりの程度によっては乳房を残す乳房部分切除術(乳房温存手術)が可能です。手術後は、必要に応じて放射線治療や薬物治療が行われます。
1 乳房のシコリ
2 乳房のひきつれ、くぼみ
3 皮膚の発赤
4 赤黒色の乳汁分泌
5 腋の下のリンパ節の腫れ
乳がんは自分で発見できる数少ないがんです。自覚できる腫瘤の大きさは1センチ以上と言われていますが、腫瘤感には個人差があり、1センチのシコリといっても、乳房の大きさによっても場所によっても違います。
乳がんの早期発見に威力を発揮するのが自己触診です。やり方は、仰向けに寝て、背中を反らすようにして乳腺を伸ばします。指の腹全体で乳房の外側から内側へ、内側から外側へと、乳腺を少しずらしながら強めに押すようにしてまんべんなく調べます。乳腺はある程度厚みがあるので腫瘤のある位置で触感が違います。乳腺の表面近くにある腫瘤であれば比較的触れやすいのですが、小さいシコリで奥の方にあると肋間に隠れてしまい見つけにくくなります。
また、エストロゲンの影響が一番少ない、月経が終わってから1週間ぐらいたったころは、乳腺の張りがなく、自己触診に適した時期です。閉経後の人は毎月、日を決めて行います。なお自己触診では、あらかじめ自分の乳腺の健康な状態を知っておくことが大切です。つまり、シコリを知るためには、シコリのない状態を知ることです。一度乳腺外来を受診してマンモグラフィー(乳房専用のX線装置)、超音波検査などを受け、専門医の指導を受けてから自己触診をするのが効果的です。
シコリを見つけたら、恐れずに医療機関を受診することが大切です。シコリが必ずしもがんとは限らず、検査をして実際にがんだったという例は意外に少ないものです。
乳がんと診断されると、がんの大きさや進行の程度、転移の有無によって大きく5段階の臨床病期に分類され、臨床病期に応じて治療法が決められます。
今のところ乳がんにならない方法はありませんが、少しでも早期に乳がんを発見するためには定期的に乳がん検診を受けることが大切です。また、乳がんのリスク因子には、乳がんの家族歴がある、出産経験がない、閉経後の肥満などがあります。アルコールのとりすぎと喫煙は乳がんを発症するリスクを上げると言われており、節制することが大切です。
解説:越田 佳朋
東京都済生会中央病院
乳腺・内分泌外科医長
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