社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2023.06.14

子宮内膜増殖症

endometrial hyperplasia

解説:武曽(むそう) 博 (千里病院 婦人科部長)

子宮内膜増殖症はこんな病気

子宮内膜増殖症は子宮の内側にある子宮内膜が必要以上に増殖して異常に分厚くなる病気で、不正性器出血(月経時以外の出血)などを引き起こします。子宮体がんと関連があり、40代に多く、診断には子宮内膜の組織の一部を採取して調べる病理組織検査の結果が重要です。

構造上の持徴から「単純型」と「複雑型」に分かれ、それぞれ細胞異型(細胞や核の大きさなどが正常な細胞と異なること)の有無の組み合わせにより「単純型子宮内膜増殖症」「複雑型子宮内膜増殖症」「単純型子宮内膜異型増殖症」「複雑型子宮内膜異型増殖症」の4つに分類されます。特に細胞異型の有無は重要であり、異型ありの30%が子宮体がんに移行するとされます。

卵巣から出るホルモンには、子宮内膜を増殖する作用がある卵胞ホルモン(エストロゲン)と、排卵後に黄体という組織から分泌され、子宮内膜の増殖を抑制する作用がある黄体ホルモン(プロゲステロン)があります。この2つのホルモンの働きにより、適切な内膜の厚さを維持して妊娠に適した内膜を形成します。
エストロゲンが過剰に分泌されると、子宮内膜は増殖を続けます。その原因としては、①出血に排卵が伴わない(無排卵周期症)②黄体機能の不良(黄体機能不全)③ホルモン補充療法などによるエストロゲン製剤の長期間の単独投与、などが挙げられます。

子宮内膜増殖症の症状

最も多い症状は不正性器出血です。月経時には、経血量の増加(月経過多)や月経期間の延長(月経遷延)などが原因で貧血を起こすこともあります。
また、子宮内膜増殖症が不妊症の原因となることもあります。

子宮内膜増殖症の検査・診断

①超音波検査:子宮内膜の厚さを計測します。目安として閉経前は20mm以上、閉経後は5mm以上で子宮内膜増殖症を疑います。

➁細胞診:膣から子宮の内腔に細い器具を挿入して細胞を採取します。

※①➁は初診時の外来診療で実施することが多いです。

③病理組織診:細胞診で異常がある場合は、細長いスプーンのような器具を子宮腔内に挿入して、子宮内膜をかき出します。細胞診と同時に実施することもありますが、細胞診より痛みを伴うので麻酔をして実施することもあります。

④子宮鏡検査:膣から子宮腔内に細いカメラ(内視鏡)を挿入して子宮腔内を隅々まで観察し、疑わしい部位をピンポイントで生検することが可能です。細胞診で異常が出た場合や、異常がなくても超音波検査で必要と思われた場合に、オプションとして実施します。麻酔をして内視鏡で生検をした後に、子宮内膜全面をかき出して病理組織診を行なうこともあります。

子宮内膜増殖症の治療法

細胞異型のない子宮内膜増殖症
60%が自然治癒するため、定期的な超音波検査や細胞診での経過観察で可能ですが、不正性器出血が続く場合はホルモン療法を実施します。

細胞異型のある子宮内膜異型増殖症
自然治癒は望みにくいため、手術や薬物療法などによる治療が必要です。
子宮全摘出術が一般的ですが、本人が妊娠を望んでいる場合は高用量の黄体ホルモン療法(MPA療法)と、検査と治療を兼ねた定期的な子宮内膜全面掻爬術(子宮内膜全面から組織を採取して顕微鏡で調べる手術)を実施します。

不正性器出血がある場合は、年齢にかかわらず婦人科を受診してください。月経期間の延長や経血量の増加がみられる場合も、速やかに婦人科を受診しましょう

長期間エストロゲンが過剰となる状況を作らないことが重要です。月経不順がある場合は、無排卵周期症になっている可能性が高く、基礎体温の測定により自己診断が可能です。閉経前後でホルモン補充療法中の場合はエストロゲン製剤の単独投与とならないようプロゲステロン製剤の併用が必要です。
また、乳がんの術後で内膜増殖作用のあるホルモン療法(タモキシフェン内服)中の患者さんは定期的な婦人科への受診をお勧めします。

そのほかに肥満、高血圧糖尿病が子宮内膜増殖症のリスク因子とされているため、該当する人は定期的な子宮がん検診(子宮体がん検診)をお勧めします。

解説:武曽(むそう) 博

解説:武曽(むそう) 博
千里病院
婦人科部長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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