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2015.10.06
便秘とは排便回数が少なくて便が出にくいことであり、便の硬さによって症状が左右されることが多くあります。日本内科学会では「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残意感がある状態」を便秘と定義しています。
便秘には、突然起きる「急性便秘」と、長期間便秘の症状が続く「慢性便秘」とがあります。高齢者に多い慢性便秘ですが、さらに、「機能性便秘」「薬剤性便秘」「器質性便秘」「症候性便秘」の4つに分類されます。なかでも多い便秘は、病気由来ではなく大腸の機能低下などが原因で引き起こされる機能性便秘で、これはさらに、「弛緩性便秘」「直腸性便秘」「痙攣(けいれん)性便秘」の3つに分けられます。そのうち、日本人の便秘の中で最も多いものが弛緩性便秘です。
慢性便秘の種類
弛緩性便秘は、大腸の蠕動運動(ぜんどううんどう/腸が波打つように動いて便を送り出す働き)が低下することにより、大腸内の糞便通過時間が長くなり、水分が多く吸収された結果、便が固くなって引き起こされます。特に、高齢者や、やせ形の女性、長期臥床(がしょう)者(寝たきりやベッドで過ごすことが多い人)などでよくみられます。なお、直腸性便秘は、便意を我慢する習慣を続けた結果起きることが多いです。痙攣性便秘は、大腸内容の推進が十分に起こらないために生じる便秘で、排便に際して腹痛を伴います。
機能性便秘の型
ちなみに、薬剤性便秘は薬の作用で便が出にくくなる便秘です。高齢者の場合は、合併する心血管系疾患や消化器疾患、神経疾患などさまざまな疾患に対して薬が投与されており、これらの薬剤が便秘の誘因となることがあります。抗コリン剤、制酸剤、医薬用麻薬、抗うつ剤などは、腸管蠕動を抑制するので、便秘の原因となり得ます。器質性便秘は消化管の悪性疾患や炎症に伴う便秘です。腸管多臓器障害に伴う狭窄(きょうさく)、湿潤、癒着が通過障害の原因となったり、術後癒着や憩室炎(けいしつえん)などの炎症治癒時の膿瘍性収縮により通過障害が生じたりします。症候性便秘は、糖尿病、甲状腺機能低下症、パーキンソン病など全身性疾患の部分症状として生じる二次的な便秘です。
弛緩性便秘は、日本人の便秘の中で最も多く、緊急に処置を要する便秘ではありませんが、他の重篤な便秘や病気が原因の便秘と識別するためにも、早めに医療機関に相談することが大切です。
強い腹痛や、嘔吐などを伴う場合は、イレウス(腸閉塞)の可能性がありますので、緊急に対処する必要があります。最近発症した便秘であれば、大腸がんなどの悪性腫瘍が原因の器質性便秘を疑い、医療機関で便潜血反応、貧血の有無、腫瘍マーカーなどをの検査を受けるとよいでしょう。特に、通過障害があれば悪性疾患の可能性が強いので、大腸内視鏡検査を受ける必要もあります。ほかにも、全身性疾患の部分症状として生じる症候性便秘や、薬の服用による薬剤性便秘の可能性もありますので、症状を放置したり自己判断したりせず、早期に受診することをおすすめします。
弛緩性便秘の予防にはまず、生活習慣の見直しや食事内容に気をつけることが重要です。食物繊維の多い食事を心掛け、便意を増やすことによって、腸内容通過時間の短縮、便の水分量と腸壁への刺激の増加をはかります。
また、腸内細菌であるビフィズス菌の割合が低下すると、腸内の異常発酵により便秘をきたしやすくなります。そのため、ビフィズス菌やその増殖を促すオリゴ糖、水溶性ビタミン剤を積極的にとることも大切です。
上記の方法が有効でない場合は、便通や便の状況に合わせて下剤を適宜使用してもよいでしょう。
解説:池本 英司
有田病院
内科部長
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