済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
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私たちが食べた物は、どのような過程を経てウンチになるのでしょうか? 順番に見ていきましょう。
まず食べ物が口に入り、消化が始まります。噛むことで食べ物は消化酵素を含んだ唾液と混じります。
その後、食道を通り、胃に入ります。胃では食べ物が消化酵素と混じってドロドロした粥のような状態になります。
次の十二指腸では、胆のうから運ばれた胆汁と、膵臓(すいぞう)から流れてくる膵液によって、食べ物を分解します。その後、小腸に運ばれ、そこで栄養素や水分が吸収されます。残った水分が大腸でさらに吸収され、最終的に肛門からウンチとして排泄されます。
食べ物が口から入ってウンチとして出るまでにかかる時間は、個人差はあるもののおよそ3日以内です。特に大腸での時間が長く、1~2日くらいかけて大腸で水分を吸収してウンチを作ります。ちなみにウンチが出る頻度は、ほぼ毎日というのが日本人の平均のようです。
ウンチを構成する成分は、80%が水分です。残りの20%が固形物ですが、そのうち「食べかす」「腸内細菌」「はがれた腸粘膜(腸の内側の細胞)」が3分の1ずつを占めます。
小腸の内側はテニスコート1面分!
小腸は大人で6~7メートルの長さがあります(大腸はその人の身長程度の長さ)。小腸の内側は柔毛(じゅうもう)という細かい毛のようなもので覆われています。これは食べ物に触れる面積を多くして効率よく栄養を吸収するためです。小腸の内側を広げるとテニスコート1面分ぐらい(約200平方メートル)の広さがあります。その細胞が新陳代謝ではがれてウンチとして出ていきます。
小腸のがんが少ない理由は?
小腸の内側の細胞(上皮細胞)はだいたい3日で入れ替わります。細胞が短い期間で新しいものになるため、小腸のがんは少ないです。一方、大腸の上皮細胞が入れ替わるのは11日と小腸より8日多くかかります。8日多い分、がんの成長を許してしまい、大腸がんができてしまうのです。
ウンチの形状を見分ける際の指標として、ブリストルスケールがあります。これはウンチの硬さをもとに口から肛門までの消化管を通過した時間(特に大腸の通過時間)を判断するために作られた基準です。硬いウンチは通過時間が遅く(大腸で吸収する水分が多く)、ウンチに含まれる水分が少なくなります。逆に軟らかいウンチは通過時間が早く(大腸で吸収する水分が少なく)、水分を多く含んだウンチになります。
ブリストルスケールはウンチの硬さや形状で7段階に分類され、下表の1や2の状態であれば便秘、6や7の状態であれば下痢と判断されます。
ウンチの臭いからも、体内の状態が分かります。臭いが強い場合は、食生活の乱れなどから腸内細菌のうち悪玉菌が増え、メタンガスやスカトールガスなどの発酵ガスが発生していると疑われます。
理想的ないいウンチは、バナナのような状態でするっと出てくるものです。いいウンチを出すには、適切な水分量(ウンチ全体の80%程度)に加え、粘液のコーティングが必要です。大腸の上皮細胞には粘液を分泌する働きがあり、それによってウンチがコーティングされ、するっと出てくるのです。
ウンチを作る過程で胆汁色素のステルコビリンが生成されますが、これがウンチの茶色を作っています。
茶色のウンチであればよいのですが、次のような色だと要注意です。
黒いウンチ
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の可能性があります。胃や十二指腸から出血があると、赤血球のヘモグロビンが酸化され、ウンチは黒くなります。これは「タール便」などとも呼ばれます。
赤いウンチ
大腸からの出血が考えられます。大腸は、胃や十二指腸のように強い酸が出ないため、血が変色せず、赤いウンチになって出てきます。大腸の炎症やポリープ、大腸がん、痔などが疑われます。
子どもの場合はロタウイルスなどによるウイルス性胃腸炎が考えられます。このほか、コレラにかかっても白くなり、俗に「米のとぎ汁状」ともいわれます。また、ウンチが白くて身体に黄疸が現れる(目が黄色っぽくなるなど)と、膵臓がんや胆管がんが疑われます。
赤ちゃんではウンチが緑色のことがあります。特に人工栄養(粉ミルクや液体ミルクなど市販の育児用ミルク)の場合に多いといわれていますが、心配はいりません。
いいウンチを作るためには、腸内環境を整えることが大事です。大腸には100~1000兆個もの腸内細菌がいます。大きく善玉菌、悪玉菌、日和見菌に分けられ、それぞれ20%、10%、70%の比率が理想です。腸内環境を整えるには、バランスよくさまざまな種類の物を食べ、腸内細菌の数や種類を増やすことが大切です。
腸はストレスの影響も受けます。そのためストレスに気づいて上手に対処することも必要です。コツは楽しめたり熱中できることを見つけておき、ストレスを抱えたらそちらに意識を切り替えることです。これは急にはできないため、普段から意識を切り替える練習をしておくのがお勧めです。
大腸は寝てる間は休んでいて、朝起きると動き出します。中でも朝食後は最も蠕動(ぜんどう)運動が盛んです。この身体に本来備わっている機能を取り戻すことで便秘の改善も期待できます。そのためには規則正しい生活が大切です。また、大腸の蠕動運動を促進するには、少し汗をかくような運動も効果的です。
ここまでウンチについて見てきました。少しはウンチを身近に感じてもらえたでしょうか?
最後に本間先生からメッセージです。
ウンチのことをあんまり嫌わないでください。ウンチは身体からのお便り、メッセージです。和式便所が主流だった頃は、しゃがんで用を足すのでウンチとの距離が近かった。でも今は洋式便所になり、場合によっては勝手に流れていくこともあります。健康状態のチェックのために、たまにはじっくりと自分のウンチを観察してみるのもいいかもしれません。
解説:本間 照
新潟病院
院長 消化器内科
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