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2014.09.03
胃潰瘍とは、何らかの理由で胃の粘膜に傷がついた後、胃酸などの攻撃によって穴が開き、傷が粘膜の下にある粘膜下層や筋層などといった深いところまで達して、胃の壁の内側にくぼみ状の病変を生じた状態をいいます。
潰瘍をきたす原因としては、幼少時から胃の中に住みつき、持続的に胃の粘膜を障害するピロリ菌や、NSAIDといわれる鎮痛解熱薬などによるものがあります。そのほか、ストレス、刺激物の過剰摂取や暴飲暴食、胃腸炎などに伴う細菌・ウイルス感染、過労などが挙げられます。
症状としては、腹部が中心の不快感・違和感などがあります。具体的には、主に上腹部を中心とした腹痛、背部痛、吐き気、もたれ感、腹部膨満感などです。潰瘍から出血をきたした場合は、吐血したり、黒色の便やタール便(コールタールのように真っ黒な便)が認められたりします。
診断を確定するためには、直接潰瘍の病変を確認することが必要です。そのため、症状などから胃潰瘍や上部消化管の疾患を疑うと、胃カメラや胃透視(バリウムを飲んで胃内部をレントゲンで撮影する検査)、血液検査などを行ないます。
症状が軽い場合は「プロトンポンプ阻害剤(PPI)」や「H2ブロッカー」といった胃酸を抑える薬の内服や注射に加えて、粘膜を保護する1~3種類の胃薬を数週間内服します。腹痛や貧血などの症状が強い場合や、潰瘍が大きい場合、出血を伴う場合などは、数日間絶食して点滴治療を行ないます。症状や経過の観察が必要になるため、始めの1~2週間程度は入院が必要です。最初の胃カメラ検査で胃潰瘍の部位から出血が認められたり、出血後の露出した血管が認められた場合は、胃カメラで確認しながら、出血部位をクリップと呼ばれる小さな金具で縛ったり、出血部の血管を焼きつぶすなどの止血処置を行ないます。輸血や鉄剤など、貧血に対する治療が必要なこともあります。胃潰瘍になる原因の多くを占めるピロリ菌がいる場合は、除菌治療も並行して行ないます。
胃潰瘍は放置すると、しばしば巨大な潰瘍になって胃に穴が開き(胃潰瘍穿孔)、腹膜炎を起こします。そうなると手術が必要になる場合があるほか、潰瘍の部位に血管がある場合は、多量に出血して吐血・下血します。その結果、出血多量によって血圧が低下し、ふらついて意識もうろうとなり、ショック状態で救急受診を余儀なくされることもよくあるため、非常に危険です。
腹痛や腹部不快感、黒っぽい便が出るなどの症状が見られる場合は、早めに近くの病院(可能ならば消化器科・胃腸科)を受診し、診察や胃カメラなどの検査を受けてください。
また、下記に当てはまる方は胃の中にピロリ菌がいる可能性があります。
・健康診断などで「胃炎」「胃が荒れている」などと言われたことがある
・親兄弟など血縁、または同居の家族に胃潰瘍や胃がんといった胃の病気がある
その場合、胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどができやすいといわれています。胃カメラや胃透視などの定期的な胃の検査をお勧めします。
胃が荒れやすい方や、脳血管障害・虚血性心疾患・不整脈といった治療のために血をサラサラにする薬(抗血栓薬)などを飲まれている方は、予防的にPPIやH2ブロッカーなどの胃酸を抑える薬や粘膜保護剤などを定期的に服用することが望まれます。
また、衛生環境の改善などによりその比率は減ってきていますが、いまだに胃潰瘍の主な原因はピロリ菌です。胃の中にいる場合は、潰瘍や胃がんの予防のために、PPIと抗生剤の2剤を1週間朝と晩に内服するピロリ菌の除菌治療を、若いうちに受けておくことが効果的です。
また、過度の食塩摂取は、胃の表面を守っている粘液を減らして胃によくないといわれているので、避けた方がよいでしょう。
そして、日頃から喫煙・飲酒・暴飲暴食を避け、充分休養を取って胃腸にストレスをかけない生活を心がけることが基本です。
解説:遠藤 広貴
唐津病院
光学診療部長
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