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2021.09.29
原田病はメラノサイト(メラニン色素をつくる細胞)に対する自己免疫疾患で、ぶどう膜炎を発症して網膜剥離による視力の低下をきたします。
自己免疫疾患とは、本来、外界から侵入してきた異物に対して攻撃して身体を守る免疫システムが、誤って身体の中の正常な細胞(原田病ではメラノサイト)を攻撃してしまう病気です。
メラノサイトは全身に分布していますが、特に多い眼(ぶどう膜)や毛髪、皮膚、耳、脳(髄膜)などに症状が出ます。
原田病は黄色人種に多く、白色人種に少ないといわれています。
主な症状は、かすんで見えにくくなる、物が歪んで見えるなどの眼の症状です。
前駆症状(ぜんくしょうじょう=病気の起こる前兆として現れる症状)として、軽い風邪の症状や全身倦怠感、頭痛、嘔吐、耳鳴り、難聴、頭髪知覚過敏(頭髪を触るとピリピリする)などがみられることがあります。その後1~2週間ほどで眼症状が出現します。
症状の程度に多少の差はあるものの、ほとんどが両眼で発症します。
その後数カ月から数年後の慢性期では、皮膚の白斑や白髪、頭髪の脱毛がみられることがあります。
原田病では、眼の中でメラニン色素が豊富なぶどう膜(虹彩・毛様体・脈絡膜)の炎症(ぶどう膜炎)により症状が出現します。また、網膜剥離や脈絡膜の肥厚(分厚くなること)、緑内障や白内障などがみられ、眼科的な検査が重要になります。
眼底検査では、網膜剥離を伴う特徴的な炎症所見を認めます。原田病でみられる網膜剥離は炎症に伴って起こる滲出性網膜剥離と呼ばれるもので、通常よく耳にする網膜剥離(裂孔原性=網膜に裂け目が生じることによるもの)とは異なります。
一般的な眼科検査に加えて、眼の奥の血管や網膜などの写真を撮影する蛍光眼底造影検査や、近赤外光を利用して網膜の断面像を調べる光干渉断層計といった画像検査を行ないます。これにより、網膜剥離や脈絡膜の肥厚を検出することが可能です。
原田病の診断には、他のぶどう膜炎の原因との鑑別が必要です。そのため、血液検査を含めた全身検査を行ないます。
全身症状に対しては、内科や耳鼻咽喉科を受診の上、髄液検査や聴力検査などを行なうことがあります。
ステロイド剤(副腎皮質ホルモン)を用いた免疫抑制療法が主になります。
発症初期に十分なステロイド剤を使って全身の自己免疫反応を強力に抑えることが必要であり、点滴で全身に大量投与します。その後はステロイド剤の内服に切り替え、眼の状態をみながら徐々に減らしていきます。
ステロイド剤の使用が長期化すると、不眠、興奮、易感染性(感染しやすい状態)、胃腸障害(胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃炎など)、糖尿病の誘発や悪化、骨粗鬆症などの副作用が生じることがあります。こうした副作用が現れてステロイド剤を早く減らしすぎたり、急にやめたりすると、原田病が再発しやすくなり、炎症が慢性化することがあります。
原田病ではいかに治療を早く開始できるかが、最終的な視力に関わってきます。治療が遅れると炎症が慢性化しやすくなり、視力の低下につながります。
「原田病の症状」で記した前駆症状は、必ずしもみられるわけではありません。そのため、前駆症状がないからといって原田病ではないとはいいきれません。逆に、前駆症状がみられた後、眼の異常をきたしている場合は原田病の可能性が高いです。
いずれにしても、視力低下など眼の異常がある際は、できるだけ早く眼科を受診するようにしましょう。
残念ながら予防は難しいです。
原田病は炎症が長引いたり、再発を繰り返したりすることがあります。ステロイド剤を用いた免疫抑制療法は副作用を生じることがありますが、薬を早く減らしすぎたり、急にやめたりすると再発しやすくなります。炎症が慢性化すると、網膜の障害などの合併症を起こすため視力の低下を引き起こします。
自己判断で薬を減量・中止したりせずに、医師の指示通りに薬を使用し、通院を怠らず、定期的に経過をみていくことが大切です。
解説:有澤 章子
野江病院
眼科部長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。