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2019.12.18
胃炎とは、胃の粘膜が炎症を起こした状態のことで、慢性胃炎と急性胃炎に分けられます。このうち慢性胃炎は原因となる特定の病気がなく、みぞおちの痛み、胃部不快感、吐き気などの上部消化器症状がみられます。かつては加齢に伴う現象だとされてきましたが、1982年にピロリ菌(ヘリコバクターピロリ)が発見され、最近では慢性胃炎の大半はピロリ菌の長期感染によって起こると考えられています。
また、胃炎が改善し、消化器潰瘍や胃がんなどもみられないが、みぞおちの痛みを中心とした消化器症状を訴えるものを機能性ディスペプシアと呼び、別の病気として扱われるようになりました。
前述したように慢性胃炎のほとんどはピロリ菌が発症の原因とされています。
胃内にいる通常の菌は、胃酸によって死んでしまいますが、ピロリ菌は特殊な酵素を持ち、アンモニアを発生させることで胃酸から身を守り、生きることができます。
ピロリ菌感染による慢性胃炎は、前庭部(胃の出口付近)を中心に胃体部(胃の中心)に広がる萎縮性胃炎です。
そのほかに、A型胃炎(自己免疫性胃炎)があります。これは、胃体部に高度の萎縮がみられ、前庭部には萎縮がみられません(逆萎縮)。多くの場合、血液中に抗胃壁細胞抗体や抗内因子抗体などの自己抗体がみられ、悪性貧血(ビタミンB12を吸収できないことで生じる貧血)をきたす特殊な胃炎です。
また、非ステロイド性抗炎症薬による薬剤性胃炎があります。肝硬変、腎不全などの重篤な病気に伴う慢性胃炎もあり、これらは栄養・代謝障害、血液循環障害が原因で発症していると考えられています。
上部消化管の構造
慢性胃炎は従来、表層性胃炎、萎縮性胃炎、肥厚性胃炎に分類されていました。また、萎縮性胃炎の進展度評価を重視した分類があり、萎縮境界が胃体部小弯側(胃の上方で内側に湾曲している部分)で胃の入り口である噴門を越えない閉鎖型と、それを越え大弯側に進展する開放型に分けられます。2014年にこれまでの考え方とは別にピロリ菌感染の有無を基本とした胃炎の分類(京都分類)が発表され、以下のように分類されています。
(1) ピロリ菌未感染胃粘膜:正常胃
(2) ピロリ菌現感染胃粘膜:慢性活動性胃炎
(3) ピロリ菌既感染胃粘膜:慢性非活動性胃炎
(4) 薬剤による胃粘膜の変化
一般的に内視鏡検査が行なわれますが、慢性胃炎と診断された人の40~50%は無症状です。
近年、胃がんはピロリ菌感染による慢性胃炎を土台として発症することが知られています。血清ヘリコバクターピロリ抗体(ピロリ菌に対する抗体)と血清ペプシノゲン(胃の萎縮の度合いを反映する酵素)の両者を測定する胃がん検診(ABC検診)が普及しつつあります。
慢性胃炎の根本的な治療法はありません。
症状がない場合は、治療することなく経過をみてよいです。しかし、発症の原因がピロリ菌感染である場合は、通常3種類の薬(抗生物質2種と胃酸分泌をおさえるプロトンポンプ阻害薬)を1週間服用し、除菌を行ないます。2013年からピロリ菌の除菌治療は保険適用となっています。また、新しい酸分泌抑制薬のボノプラザンを含む除菌治療では、除菌率は90%と高率ですが、近年、クラリスロマイシン耐性菌の出現による除菌率の低下が問題となっています。
ピロリ菌感染による慢性胃炎が胃がんの主要な原因であり、ピロリ菌を除菌することで胃がんの発症リスクは大幅に減ると考えられています。したがって、早期のピロリ菌検査、除菌治療をするようにしましょう。
慢性胃炎の主要な原因であるピロリ菌に感染するのは4~5歳くらいまでの幼小児期です。感染経路は不明で、感染するとそのまま胃に定着し、一生感染が続きます。 感染自体を予防することは難しいですが、早期のピロリ菌検査と除菌治療を行なうことで、胃がんを予防することができます。
佐久間 博史
川俣病院
院長
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