社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

機能性ディスペプシア

Functional Dyspepsia

解説:岩永 明人 (新潟病院 消化器内科医長)

機能性ディスペプシアはこんな病気

病名を聞いてもピンと来ない人が多いかもしれませんが、以前我が国では、「胃下垂」「胃アトニー」「胃けいれん」「胃酸過多」「神経性胃炎」などと呼ばれていたこともあります。「機能性」は形態的異常、つまり形が変わったり、傷がついていたりといったことがないにもかかわらず症状を起こす状態のことを指します。「ディスペプシア」はギリシャ語に由来し、dys (bad=悪い)+ peptein (digestion=消化)、すなわち胃や十二指腸に関連した「消化不良」を意味します。機能性ディスペプシアとは、検査で異常が確認できないにもかかわらず、胃もたれや胃痛といった症状が続く病気です。「慢性胃炎」という聞き慣れた病名もありますが、これはピロリ菌による病気で、胃もたれや胃痛といった症状とは直接関連しないことが分かってきました。

特徴として、①慢性的である、②胃もたれや胃痛など胃や十二指腸に由来する症状がある、③症状の原因となりうる異常が確認できない―という3点が挙げられます。例えば前日に脂っこい食べ物を食べすぎたりお酒を飲みすぎたりして、胃もたれや胃痛を経験した人はいるでしょう。しかし、機能性ディスペプシアの場合、暴飲暴食のような明らかな原因がないにもかかわらず症状が慢性的に持続します。

機能性ディスペプシアの原因

先述のとおり、病院で行なう検査で異常が見つからないという特徴があります。ただ、異常が見つからないということと異常がないということは必ずしも同じではない点に注意が必要です。現代の医学では、分からないことはいまだにたくさんあるはずですが、研究レベルでは知覚過敏、消化管運動異常、精神的要因やストレス、胃酸分泌と酸感受性、感染(ピロリ菌を含む)、遺伝子感受性(体質)などいくつかの原因が想定されています。

機能性ディスペプシアの治療法

酸分泌抑制薬(ヒスタミンH2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬など)、消化管運動機能改善薬(ドパミンD2受容体拮抗薬、5-HT4受容体刺激薬、コリンエステラーゼ阻害薬など)、漢方薬、抗うつ薬・抗不安薬などが、考えられる原因に応じて使われます。一部の患者さんに有効といわれるピロリ菌除菌薬が使用されることもあります。十分に医師と相談して処方を受けましょう。

機能性ディスペプシアは、病院で診察や検査を受け、形態的異常がないことが分からないと診断できません。特に思い当たる原因がないのに胃もたれや胃痛が続く場合は、なるべく早めにクリニックや病院で医師に相談しましょう。異常がないことを証明するのは非常に難しく、検査は多岐にわたり、時間がかかる場合もありますが、その都度医師と相談し、適切な検査を受けましょう。検査で異常が見つかった場合、機能性ディスペプシアではない他の病気ということになるので、そのときも適切な治療を受けましょう。

また、機能性ディスペプシアは胃食道逆流症(GERD)や過敏性腸症候群(IBS)としばしば合併することがあり、慢性膵炎まんせいすいえんが隠れている場合もあります。合併症も含めて診断・治療を受けることが大切です。

原因が特定できない病気なので予防は難しいかもしれません。しかし、先ほど述べた原因の中で、精神的要因やストレス、胃酸分泌、感染を予防することはできるかもしれません。いつもおおらかに笑顔で過ごし、よく働きよく眠り、腹八分目までにし、お酒を飲みすぎず、安全な食品を食べるようにする、といった、ごくごく基本的な心掛けが、機能性ディスペプシアの予防にとどまらず、自分を守る手立てといってよいのではないかと思います。

岩永 明人

解説: 岩永 明人
新潟病院
消化器内科医長


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