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2018.10.31
貧血は何らかの原因で体内を循環している赤血球の容量が減少した状態です。赤血球が全身に十分な量の酸素を運搬できず、倦怠感やめまいなどの症状が現れます。
鉄欠乏性貧血は、赤血球細胞内の重要なタンパク質であるヘモグロビンを構成する鉄が不足して起こる貧血です。たとえてみると、お饅頭作りにあんこが足りないというイメージです(皮が足りないというイメージは巨赤芽球性貧血)。日本では頻度の高い貧血で、成人女性の約25%が発症しているといわれています。鉄不足の原因として、偏食や胃腸切除などによる吸収低下、月経などの性器出血や消化管出血による排泄増加、成長期や妊娠・授乳に伴う需要増加が挙げられます。
鉄欠乏状態が進行すると、全身の倦怠感やめまい、耳鳴り、動悸、息切れなどの自覚症状、眼瞼結膜(がんけんけつまく=まぶたの裏側の粘膜)や顔面の蒼白などの他覚症状といった貧血の症状が現れます。それ以外にも、さじ状爪(爪が薄く平坦になる)や舌炎、口角炎、嚥下障害、異食症(氷を食べたがるなど)のような症状が見られます。
鉄欠乏性貧血は採血してヘモグロビン(Hb)の量で診断されます。成人男性や新生児ではHb13g/dl以下、成人女性や学童ではHb12g/dl以下、高齢者や乳幼児ではHb11g/dl以下だと診断されます。また、Hb7~8g/dl以下になるとほとんどの患者さんに症状が見られます。ただし、急性出血の直後では、検査時点でHb値がまだ下がっていないこともあるので注意が必要です。
また、トランスフェリンというたんぱく質と結合していない血液中の鉄の数値が高い場合や、フェリチン(鉄を内部に含むたんぱく質)の数値が低い場合などにも診断されます。鉄欠乏性貧血と診断されたときは、鉄が欠乏する原因を調べることが重要です。女性であれば子宮筋腫などの婦人科疾患、男性や閉経後の女性であれば消化器疾患による出血が原因であると疑われます。
鉄の量を増やすために鉄剤の内服や注射を用います。治療に2カ月以上かかることが多く、場合によっては6カ月ほど必要なこともあります。
貧血の自覚症状が出たときにはかなり進行していることがほとんどです。そのため、まずは定期的に健康診断を受けましょう。自覚症状のない軽度の貧血であると判明することもあります。鉄欠乏性貧血と診断されたときは、医療機関で原因疾患まで調べるもらうことも大事です。
貧血の予防には食生活が重要になります。1日3食規則正しく食べて、偏食、減食、欠食を改善しましょう。思春期の女子や若い女性では、必要以上のダイエットや欠食(特に朝食)が貧血の原因になっています。インスタント食品中心の生活も改める必要があります。
次の主食、主菜、副菜などを組み合わせ、栄養素をバランスよく摂りましょう。
・主食 炭水化物を多く含む食品(ご飯、パン、めん類など)
・主菜 良質のたんぱく質を多く含む食品(魚介類、肉類、卵、大豆製品など)
・副菜 ビタミンやミネラルを多く含む食品(野菜類、海藻類など)
・その他 乳製品や果物類
ほかにも、良質のたんぱく質を含む食品を選ぶことも大事なポイントです。たんぱく質は、血液中の赤血球やヘモグロビンの材料となる大切な栄養素です。一度にたくさん取っても体の中にためておくことはできないので、魚介類、肉類、卵、大豆製品、乳製品などを毎食主菜に取り入れて食べるようにしましょう。
鉄欠乏性貧血の場合、日々の食事でできるだけ鉄分の多い食品を取り入れると予防につながります。吸収率の高いヘム鉄(肉類や魚介類に含まれる)と低い非ヘム鉄(乳製品や青菜に含まれる)があり、良質の動物性たんぱく質やビタミンCと一緒に食べると吸収率が高まるといわれています。ただし、いったん発症すると投薬が必要なことがほとんどなので、「食事で何とかしよう」とは思わずに医療機関を受診しましょう。
解説:窪田 剛
大阪府済生会富田林病院
副院長
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