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2017.10.04
いわゆる「ほくろのがん」です。メラニン色素を作るメラノサイトという細胞が、がん化することで発生します。高齢の方に多い病気ですが、若い方に発生する場合もあり、紫外線が影響していると考えられています。進行が早く、転移を起こすことが多い悪性度の高い皮膚がんです。
メラニン色素は、紫外線から身体を守るはたらきをしています。白色人種はメラニン色素が少ないため、メラノーマの発生が高頻度です。一方、メラニン色素の多い黒色人種の発症はまれです。黄色人種である日本人は、両者の中間程度の発生頻度で、年間約2000人が発症しています。
腫瘍は、茶色や黒色の「しみ」もしくは「できもの」で色むらがあり、形がいびつであることが多いです。痛みやかゆみはありません。全身のどこの皮膚にもできます。日本人では足の裏にできる場合が多く(全体の約30%)、手足の爪にもしばしば発生します(全体の約10%)。口や目の粘膜にできることもあります。
病気が進行すると、まず所属リンパ節(病変の近くのリンパ節)に転移する場合が多く、所属リンパ節までの皮膚に転移することもあります(in transit <イントランジット>転移)。さらに進行すると、肺や肝臓などに転移します。
治療は、できるだけ早期のうちに切除することが大切です。発生部位や腫瘍の厚みにより、腫瘍からある程度(1~2cmの場合が多い)離して、切り取ります。所属リンパ節に転移がある場合、リンパ節も切除することが望まれます。
遠隔転移※がある場合は、抗がん剤治療を行ないます。数年前までは有効な抗がん剤がほとんどありませんでしたが、最近は免疫チェックポイント阻害剤(商品名: オプジーボ、キイトルーダ、ヤーボイ)や、分子標的薬(商品名: ゼルボラフ、タフィンラー、メキニスト)という新しい抗がん剤が発売され、効果が出る患者さんが増えています。
※遠隔転移: 最初に発生した腫瘍から遠隔部の臓器、あるいは遠隔部のリンパ節に拡がったがんのこと
日頃から、自分で皮膚をチェックして(難しい場合は家族や友人に見てもらって)、「なんだか変わったしみ(もしくはほくろ)だな」「だんだん大きくなっている」「形や色が変だな」と思うものがあれば、一度皮膚科を受診しましょう。
メラノーマはふつうのほくろよりも黒々しく、形がいびつです。疑うべき症状の特徴として、ABCDEルールというものがあります。
ABCDEルール
A:Asymmetry(形が不規則)
B:Borderline irregularity(腫瘍の境界が不明瞭)
C:Color variation(色むらがあるなど、色調が多彩)
D:Diameter enlargement(拡大傾向、直径が6mm以上)
E:Elevation of surface(表面が盛り上がる)
これらの特徴がそろっているときは、メラノーマが強く疑われます。変わった形で、色むらがあり、表面が盛り上がって、だんだん大きくなった直径6mm以上の「しみ」「できもの」がある場合は、すぐに皮膚科を受診しましょう。
メラノーマはメラニン色素の少ない、すなわち紫外線防御能が低い白色人種に多く発生し、メラニン色素の多い(紫外線防御能が高い)黒色人種にはほとんど発生しません。このことから、発生には紫外線が影響していると予想されています。
しかし日本人では、「医学解説」で述べたように、足底や爪といった紫外線にあたることの少ない部位に発生することが多く、紫外線の関与は少ないのではないかと考えられています。そのため日本人の場合、日焼け止めクリームや帽子などで紫外線を防御することで、発生が予防できるという確証は今のところありません。
現在ではまだメラノーマを予防する確実な方法はないため、早期発見に努めることが一番大事です。
解説:岡林 綾
大阪府済生会富田林病院
皮膚科医長
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