済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
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2015.06.18
基底細胞がんは、日本人に多い皮膚がんの一つです。まず顔面などに小さな黒っぽい盛り上がりができ、症状が進行すると中央部がくずれ、潰瘍(かいよう/シコリ)を作るようになります。しかし、かゆみや痛みはありません。
がんといっても転移はまれで、命にかかわることはほとんどありません。しかし、徐々に大きくなって、皮膚の奥へ侵入することもあるため、早めに治療を受けることをおすすめします。特に、眼のまわりや鼻、耳の周囲などにできやすいので、手術後の容貌のことを考え、病変が小さいうちに取っておいてもらったほうがいいでしょう。
なお、基底細胞がんは、高齢者でよくみられ、男性のほうが女性に比べてやや発症しやすい傾向があります。顔面の発生例が多いので、紫外線の影響が大きいと考えられていますが、時に体幹や足底に生じることもあるので、これだけが原因ではないようです。また、生まれつき皮膚が弱く基底細胞がんが発症しやすい体質の人もまれにいます。
基底細胞がんかどうかは、皮膚を視診しただけで診断することもできますが、確定的な診断をするためには、病変部の一部を切り取り、顕微鏡で調べることが必要です。このほか、エコー検査やMRIなどを使った検査で、がんの広がっている範囲を調べることもあります。
基底細胞がんの治療は、外科療法が基本です。がんから少し大きめに皮膚を切除し、皮下脂肪組織も十分な深さまで切除します。初回で完全に切除できれば再発のリスクは小さくなります。
基底細胞がんは、見た目がホクロによく似ているため、自己判断は危険です。ホクロと思っていても、基底細胞がんのことがあります。自分で判断せず、ホクロかどうか気になったら、直ちに皮膚科を受診し、医師の判断を仰ぐようにしましょう。
最近は、ダーモスコピーという、皮膚を大きく拡大して、しかも皮膚の中まで観察できる極めて有用な診察器具があります。
なお、悪性黒色腫(メラノーマ)でも基底細胞がんと似た症状が見られるため、やはり自己判断せず、早めに医師の診察を受けたほうがいいでしょう。
基底細胞がんは、日光(紫外線)に当たることで引き起こされる場合が多いため、できるだけ紫外線を直接浴びないようにすることが重要です。
基底細胞がんの発症は、メラニン色素の量と関係があると考えられています。メラニン色素は、紫外線を遮断することによって皮膚の細胞が「がん化」するのを防ぐ働きがあります。メラニン色素の量は人種で異なり、黒色人種は多く、白色人種は少ないといわれています。日本人でも特に色の白い人などは、日頃から紫外線を避けるように注意することが大切です。
基底細胞がんが高齢者に多いのは、長期間にわたって紫外線を浴び続けた悪影響といわれています。できるだけ若い頃から紫外線に当たらないように帽子や傘などで紫外線を防御したり、日焼け止めを使ったりするなどの予防策を心がけましょう。
解説:中川 浩一
富田林病院
皮膚科部長
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