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2020.01.29
痔核は「いぼ痔」とも呼ばれ、痔瘻(じろう=あな痔)、裂肛(れっこう=切れ痔)とともに肛門の3大疾患として、最も多くみられる肛門の病気です。
歯状線(直腸と肛門のつなぎ目)を隔てて肛門の外(皮膚)側にできる「外痔核」と内(直腸粘膜)側にできる「内痔核」に分けられますが、実際は直腸粘膜側のみにできる例はほとんどありません。歯状線付近の上下にまたがって大きくなるものが多く、これらも一般的には内痔核と呼ばれます。
肛門部には、血管、動静脈吻合(どうじょうみゃくふんごう=動脈と静脈がつながる部分)、平滑筋、弾性組織からなるクッション部分があり、肛門閉鎖の役割を果たしています。痔核は、この肛門クッション内でのうっ血や、周りの組織が弱くなり伸びて肛門から脱出するようになってできると考えられています。
出血、疼痛、脱出(肛門の外に出る)、腫れ、かゆみ、粘液漏出などですが、内痔核部(直腸粘膜)には痛覚がなく、脱出したときにのみ痛みがみられることがほとんどです。持続的な痛みや不快感がある場合は、痛みの原因はほかにあることもあります。
出血の多くは排便時にみられ、通常は痛みを伴わず、出血がほとばしるように勢いよく出たり、ぽたぽた落ちるように出たりするのが特徴で、鮮やかな赤色をしています。排便後、出血は止まることがほとんどです。運動時や歩行時に出血することもあります。
かゆみは、排便後の清浄がうまくできていないことや、粘液による皮膚への刺激が主な原因です。
病歴と肛門診察(視診、触診、指診、肛門鏡検査)で診断します。
世界的に汎用されているGoligher(ゴリガー)分類は、内痔核の脱出・還納(元に戻すこと)の程度を患者の自覚症状により4段階に分けて判断するものです。
Grade Ⅰ:排便時に肛門管内で膨隆(膨れている状態)するが、脱出はしない
Grade Ⅱ:排便時に肛門管外に脱出するが、排便が終わると自然に還納する
Grade Ⅲ:排便時に脱出し、用手的(指などを使って)な還納が必要である
Grade Ⅳ:常に肛門外に脱出し、還納が不可能である
保存的治療としては、生活習慣・排便習慣の是正、薬物療法があります。日常生活で十分な水分を摂取し、果物や食物繊維を食べるようにしましょう。また、排便習慣として過度のいきみや長時間便器に座り続けることを避けるよう心がけてください。便意は我慢せず、5分以内に排便を行なうことが肝心です。
薬物療法(坐薬と軟膏)は、脱出、疼痛、出血などの症状を和らげるのに有効ですが、痔核自体を消失させる効果はありません。
硬化療法は、硬化剤(フェノールアーモンドオイル)を痔核に直接注射し、痔核を硬化・収縮させ、出血を防ぐ治療法です。
また、2005年に認可されたALTA(アルタ)療法もあります。これは、いままで手術以外の方法がなかった脱出を伴う内痔核に直接ALTA(硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸を主成分とする薬剤)を注射する治療法です。
痔核結紮切除術(じかくけっさくせつじょじゅつ)は、あらゆるタイプの痔核に有効な手術療法です。1960~70年頃から日本でも行なわれるようになりました。根治性は高いのですが、術後の痛みや出血などの合併症は、ALTA療法より多いことが欠点です。
そのほか、ゴム輪で痔核の根元を縛って血流を止め、痔核を壊死させるゴム輪結紮療法があります。
痔核からの出血の特徴として、排便時にみられることが多く、鮮明な赤色で、ほとばしるように出血することもあれば、紙や便に少しだけ付着する程度のこともあります。排便後はすぐに治まるのも特徴的です。
排便後まで続く出血、暗赤色の出血や便に混ざった出血は肛門より奥からのものであることが多く、大腸病変が原因の可能性があるため、下部消化管精査が必要です。
また、大腸がん検診の便潜血検査で陽性と診断されても、痔が原因で陽性になったと思い込み、大腸内視鏡検査による精密検査を受けないケースがみられます。内痔核などの痔疾患が便潜血検査の陽性の原因となることは少ないので、陽性の結果が出たら、大腸の精密精査を受けましょう。
痔核の発症には、排便習慣と生活習慣が大きく関わっています。
排便時にいきむ人や、トイレに長時間座っている人が痔核になりやすいといわれています。
また、重いものを運ぶ人や長時間座ったままのことが多い職業の人、非ベジタリアンの人に発症することが多いことも報告されています。
治療後も再発の可能性があり、排便習慣と生活習慣に気をつけることが大切です。治療時に受けた生活上の注意は守り続けましょう。
解説:小島 正幸
常陸大宮済生会病院
院長
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