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2024.11.20
細菌性角膜炎とは、細菌が角膜実質(角膜の90%を占める最も厚い層)内に侵入・増殖することで引き起こされる病気です。
若年者の場合、コンタクトレンズの使用や外傷が原因で起こります。高齢者の場合、眼の表面に常在している細菌が起因菌(感染症を引き起こす細菌)となり、角膜上皮から感染します。発症率に男女差はありません。
充血・視力低下・流涙・眼脂(がんし=目やにのこと。細菌や異物の侵入で起こる免疫反応)などの症状があります。軽症では目の中に異物感を感じる程度ですが、悪化し重症になると、眼の表面に刺激を感じたり、眼の奥がズキズキと痛んだりする眼痛の症状も多く見られます。
角膜上皮や角膜実質に炎症が生じ、白血球が集まることで角膜上皮下が白く濁る角膜浸潤や、結膜・毛様(黒目周辺)の充血、前房(角膜から虹彩までの範囲)の蓄膿、まつげの根元の部分が炎症を起こす眼瞼炎の有無などを、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査(眼に光を当てて拡大鏡で観察する検査)で確認します。さらに、特定の地域や集団の中での病気の発生頻度や要因をまとめた疫学情報をもとに、感染症の原因となる起因菌を予想します。
起因菌を検出するための微生物学的検査は、診断の要です。角膜にこすって菌を搾取する擦過(さっか)を行ない、感染病巣を培養し、起因菌を分析することが重要になります。眼には常在菌が存在しているため、培養検査で分離された細菌が起因菌かどうかを臨床的に判断します。塗沫鏡検査では起因菌となりそうな細菌を「青色」と「赤色」に染め分けるグラム染色を行ない、陽性・陰性・球形の球菌・細長い棒状または円筒状の杆菌(かんきん)に区別することで、起因菌を予想します。
主な治療法は、抗菌点眼薬の使用と眼軟膏の塗布です。初期治療は、検査で予想された起因菌に合った抗菌薬を使用します。しかし実際には、初期だと菌を特定できないこともあり、その場合は起因菌を推測し、抗菌薬に対する反応をみながら治療を進めていきます。薬剤選択と初期治療が正しければ、抗菌点眼薬の頻回投与(1日6回)と眼軟膏塗布により、約2週間で軽快します。眼の外側を覆っている強膜や眼内に感染が波及するような重症例では、抗菌の点滴を併用します。これらの治療を行なっても改善しない場合は、起因菌の見直しを検討します。
充血・視力低下・流涙・眼脂などの症状が出たら、早めに眼科を受診してください。
細菌性角膜炎の発症の原因として最も多いのは、コンタクトレンズの使用です。重症例は、2週間頻回交換型や、洗浄液を使用して1~2年間にわたり繰り返し使用できるものなど、日常のレンズケアが必要なソフトコンタクトレンズを使っている人に多く、レンズケア不足によるレンズ汚染が重要なリスク因子になっています。そのため、正しいコンタクトレンズの使用が予防につながります。
解説: 大田 遥
呉病院
眼科 主任医長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。