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2021.09.22
帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹による水疱などの皮疹が治った後も続く痛みで、最も頻度が高い帯状疱疹の合併症です。
ウイルスによって傷つけられた神経が過剰に興奮することで、痛覚過敏やアロディニア(微小な刺激でも痛みを感じることで「異痛症」とも呼ぶ)などが起こるとみられています。
子どものときに発症した水痘(すいとう=水ぼうそう)のウイルス(ヘルペスウイルス)が神経に潜み、疲れやストレスによって免疫力が低下するとウイルスの活動が再開し、神経を通って皮膚に水疱を作るのが帯状疱疹です。日本人では5~6人に1人がかかるとされています。
焼けるような痛みが持続する、刺すような痛みを繰り返すといったものから、ズキズキ、ヒリヒリ、あるいは締めつけられるような痛みなど、さまざまな痛みをきたします。
触れるだけで痛みを感じる(アロディニア)こともあれば、逆に感覚が鈍くなることもあります。
主に内科やペインクリニックで、神経の活動を抑える抗うつ薬や神経痛に効く各種の鎮痛薬による薬物療法、神経ブロック療法、レーザー治療、鍼灸治療など、症状や程度に合わせて治療法を選択します。
神経が傷ついたことによって起こる「神経障害性疼痛」という痛みなので、通常の痛みよりも治療は困難なことが多いです。このような難治性の神経障害性疼痛には、「脊髄刺激療法」が有効です。
脊髄刺激療法とは、脊髄を電気で刺激することで、痛みの信号をブロックして脳まで伝わらないようにする方法です。背骨の隙間に針を刺して、そこから電線を入れて脊髄の膜の表面に置き、身体に埋め込んだ小さな刺激装置から電線に電気を流します。
局所麻酔でできる小さな手術で、電線や機械を体内に埋め込むだけであり、脊髄や神経などの組織は一切損傷せず、もし必要がなくなれば取り去ることができるなどが利点です。
帯状疱疹後神経痛は帯状疱疹が重症だから起こるというわけではなく、起こりやすさは患者さんによって異なり、起こるかどうかは事前には分かりません。したがって早期発見が重要となります。
帯状疱疹の痛みは、皮疹が現れる前の「前駆痛」、皮疹が現れているときにみられる「急性帯状疱疹痛」、皮疹が治った後も続く「帯状疱疹後神経痛」に分類されます。
前駆痛や急性帯状疱疹痛は「侵害受容性疼痛(炎症や組織の損傷によって起こる痛み)」であり、通常の痛み止め(消炎鎮痛薬剤)が有効です。一方、帯状疱疹後神経痛は「神経障害性疼痛」のため、通常の痛み止めは効きにくいのが特徴です。
帯状疱疹後神経痛のリスクを低下させるためには、痛み(前駆痛)の後に赤みがかった水疱が出てきたら帯状疱疹と判断し、できるだけ早期(遅くとも3日以内)に帯状疱疹の治療を開始することが肝心です。
帯状疱疹の症状にできるだけ早く気づき、早期から治療を開始することが帯状疱疹後神経痛の出現予防につながります。
帯状疱疹の抗ウイルス薬治療では、主に経口薬を使います。しかし、重症で高齢の人の場合は、入院施設のある病院で抗ウイルス薬の点滴静脈注射を受けることが、その後の帯状疱疹後神経痛のリスクを下げるのに最も効果的と考えられています。
帯状疱疹はウイルス感染症ですので、免疫力が低下したときに発症しやすい病気です。できるだけ休息をとって免疫力の低下を防ぐことも肝心です。
なお、2016年から50歳以上を対象に帯状疱疹のワクチンを接種できるようになりました。水痘にかかったことがある人は、すでに帯状疱疹のウイルスへの免疫がありますが、加齢によって弱まります。そのためワクチン接種を行なうことで免疫を強化し、帯状疱疹を予防しましょう。予防接種で完全に防げるわけではありませんが、帯状疱疹を発症したとしても軽い症状ですむといわれています。
痛みとうまく付き合う
帯状疱疹後神経痛は主に薬物療法などで治療しますが、痛みを完全に取り除くのは困難です。そこで生活習慣を工夫して痛みとうまく付き合っていくことを心がけます。
日常生活の注意点としては、できるだけ趣味や好きなことに没頭する時間を取ったり、外出したりして痛み以外のことに注意を向ける、入浴して体を温めて血行をよくする、などが挙げられます。
解説:小倉 光博
和歌山病院
副院長 兼 脳神経外科部長
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