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済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
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2024.09.18
亜鉛欠乏症は、体内の亜鉛が不足することで皮膚炎、口内炎、脱毛、発達障害、味覚・嗅覚障害など、さまざまな症状を引き起こす病気です。
亜鉛は人の身体を構成する元素の中で、極めて少量しか存在しない重要な微量元素であり、骨や筋肉、肝臓、腎臓など、全身に分布しています。体内の300種類以上の酵素反応に関与しており、亜鉛が不足するとさまざまな症状を引き起こします。亜鉛の低下は摂取不足だけでなく、需要増大や吸収不全、過剰排泄、慢性的な病気(慢性肝炎・肝硬変、糖尿病、炎症性腸疾患、腎不全)が原因になる場合もあります。特に肝硬変の方や慢性腎不全で透析中の方は、亜鉛欠乏を認めていることが多く、注意が必要です。
亜鉛欠乏の症状としては皮膚炎、脱毛、爪の変形、味覚障害、口内炎、食欲低下、貧血、子どもの発達障害、性腺(精巣・卵巣)がうまく機能しなくなる性腺機能不全、易感染性(感染症にかかりやすくなる状態のこと)、下痢、骨粗しょう症などがあります。傷が治りにくくなるため、褥瘡のある患者さんは亜鉛不足に気を付けてください。
亜鉛欠乏症は、亜鉛欠乏による症状と血液検査による血清亜鉛値で診断されます。また、血液に含まれるリン酸化合物を分解する酵素(血清アルカリフォスファターゼ)の低値も診断の参考になります。
食事療法と薬物療法があります。
一般的には食事や健康補助食品(サプリメント)で亜鉛を補いますが、重症度に応じて薬剤による補充療法を行ないます。薬物療法(亜鉛補充療法)では、50~100mg/日(成人)を目安に薬を服用し、小児は1~3mg/日、または体重20kg 未満で25mg/日、体重20kg 以上で50mg/日を目安に服用することがあります。ただし、亜鉛は取り過ぎもよくありません。過剰になると銅や鉄の吸収が阻害され、貧血などの症状を引き起こしますので、むやみにサプリメントなどを飲むことは控えましょう。
亜鉛欠乏症にはさまざまな症状がありますが、早期にみられる特徴的な症状はありません。貧血や味覚異常、下痢が続くなど、亜鉛欠乏と思われる症状が気になるようであれば、一度医療機関に相談しましょう。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年度版)」によると、亜鉛摂取推奨量は成人男性で10mg/日、女性で8mg/日とされています。一方、「令和元年国民健康・栄養調査」における日本人成人(18歳以上)の亜鉛摂取量(平均値±標準偏差)は、男性で平均値9.2±3.5 mg/日、女性で平均値7.7±2.9 mg/とされ、男性は5.7 mg/日~、女性は4.8 mg/日~と推奨量に比べてやや少なく不足気味といえます。しかし、基本的には通常の食事で亜鉛欠乏になることはありません。亜鉛摂取不足が気になる人は、バランスのよい食事を心がけ、亜鉛が豊富な食べ物として牡蠣、しじみ、海藻類、チーズなどの乳製品、牛肉、豚肉のレバーなどを意識して取りましょう。
解説:日髙 勲
山口総合病院
消化器内科 内科部長
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