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2019.07.31
においの感覚(嗅覚)は、空気中のにおい分子が鼻と脳との間にある嗅細胞(嗅神経細胞)を刺激し、前頭部(脳の前方)にある嗅覚中枢に伝わることで起こります。嗅覚障害は、このにおいの感覚(嗅覚)が弱くなる、もしくはにおいを全く感じなくなる状態をいいます。
図:においの感覚が起きるしくみ
嗅覚障害はにおいを感じなくなる原因によって、以下の3つに分類されます。
気導性嗅覚障害
におい分子が嗅細胞に到達できないために、においを感じなくなります。アレルギー性鼻炎などによる鼻づまりや、副鼻腔炎に伴うポリープ(鼻茸)がにおい分子の通り道をふさぐことが原因です。ポリープが原因の場合、副鼻腔炎を治療すればにおいの感覚が回復することが多いです。ポリープが大きくて改善しないときには、内視鏡下副鼻腔手術を行ないます。
嗅神経性嗅覚障害
嗅細胞が傷ついたために、においを感じなくなります。骨折や強い脳震盪(のうしんとう)といった頭部外傷によって嗅神経が切れてしまったり、嗅細胞が風邪ウイルスの感染によって破壊されてしまったりすることが原因です。いずれもダメージの程度によって、においの感覚が自然に回復することもあれば、そのまま障害が残ることもあります。早めに治療を受けることが大切です。
中枢性嗅覚障害
脳挫傷(脳の打撲)といった頭部外傷や、脳出血、脳梗塞、脳腫瘍のほか、パーキンソン病やアルツハイマー型認知症など脳神経に変化が起こる病気が原因です。最近では、特にアルツハイマー型認知症など脳の機能低下を引き起こす病気のごく初期に嗅覚障害が出現することが知られていて、認知症を早期発見する検査として応用する研究が行なわれています。
鼻の中を診察し、ファイバースコープによる観察を行ないます。においの感覚を調べる検査としては、におい物質を血管内に注入してにおいを感じるかをみる静脈性嗅覚検査があります。副鼻腔炎や腫瘍などの原因を調べるために、CTなどの画像検査も行ないます。
においを感じない期間が長くなると、においの感覚が回復しない可能性が高くなります。特に6カ月を過ぎると回復しないことが多いため、においを感じなくなった時点で早めに治療を受けることが大切です。
予防できる病気ではないので、においを感じなくなったら早めに治療を受けましょう。将来的に簡便な嗅覚検査法が普及すれば、認知症などの早期発見に役立つ可能性があります。
解説:小山 徹也
福岡総合病院
耳鼻咽喉科 頭頸部外科主任部長
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