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2015.04.22
顎関節症(がくかんせつしょう)とは、「口を開けると痛む(開口時痛)」「口が開かない(開口障害)」「あごで音がする(関節雑音)」といった症状がでるあごの疾患です。これらの症状は、あごの関節を構成する骨・筋肉(咬筋:こうきん・側頭筋など)・関節円板・靭帯などの異常によって生じます。タイプ別にⅠ型(筋肉の異常)、Ⅱ型(関節靭帯の異常)、Ⅲ型(関節円板の異常)、Ⅳ型(骨の異常)、Ⅴ型(どれにも当てはまらないもの)があり、タイプによって治療法が異なります。
顎関節症の治療のゴールは、「痛みなく」「十分に口が開く」ことです。「関節雑音」を手術で治療していた時代もありましたが、現在では症状が「関節雑音」だけの場合は治療の必要はないとされています。
顎関節と筋肉の構造
以下にI~IV型について、それぞれの特徴と一般的な治療方針を簡単に解説します。
I型
主にあごの筋肉(咬筋・側頭筋など)の「使いすぎ」が原因のいわゆる「筋肉痛」です。咬筋は頬、側頭筋はこめかみに痛みを生じるので、こめかみの痛みから「頭痛」と訴える患者さんもいます。これは、筋マッサージやあごの安静で治療します。II型
関節靭帯の異常で、簡単にいうと「あごのねんざ」です。無理に口を開けすぎたり、固いものを食べたり、歯ぎしりや食いしばりでも生じます。顎関節は耳の穴の直前にあるため「耳の痛み」と思い、耳鼻咽喉科を受診される患者さんもいます。あくびは控える、固いものは避ける、食事は小さくカットしてあまり大きく口を開けないでいいようにするなど、可能な限りあごを安静にして治療します。III型
関節円板の異常です。関節円板とは、上あごの骨と下あごの骨の間に存在する、クッションのような役割をする組織です。III型の患者さんは関節円板の位置がずれてしまっているため、口を開けると「カクカク」「ポキポキ」といった「関節雑音」を伴います。しかし、症状が「関節雑音」だけの場合は特に治療の必要はありません。一方で、関節円板のずれがひどくなると「関節雑音」が消失して「開口障害」が出現します。この場合、一般的にマウスピース治療を行ないますが、効果が不十分な場合には、歯学部付属病院の顎関節専門外来などで、より専門的な治療を行なうことがあります。IV型
関節を構成する下顎骨の関節突起の変形によるものです。このタイプは症状だけでは診断困難です。そのため、顎関節症で来院された患者さんの診断は、まず、あごのレントゲンを撮影して骨の変形がないか調べるところからスタートします。変形した骨を元通りにすることは困難なので、「痛みなく」「十分に口が開く」ことを目標にマウスピース治療や開口訓練を行ないます。
「医学解説」でも説明したように、顎関節症(がくかんせつしょう)の3大症状は「口を開けると痛む(開口時痛)」「口が開かない(開口障害)」「あごで音がする(関節雑音)」です。このうち、「関節雑音」は、「痛みがなく」「十分に口が開けられる」ならば治療の必要はありません。簡単な目安として、自分の手の人差し指・中指・薬指をそろえて並べたときの幅(3横指:さんおうし)よりも大きく口を開くことができれば、「十分に口が開けられる」と判断します。しかしながら、いままで「関節雑音」があったのに、突然音がしなくなった場合は要注意です。「開口障害」が生じている可能性があるので、3横指入るか確かめてください。もし、3横指が入らなかったら、できるだけ早くお近くの歯科医院または口腔外科にご相談ください。症状が痛みだけの場合は、あごを安静にして1週間程度様子をみてください。それでも改善がなければ、医療機関の受診をおすすめ致します。
近年、無意識のうちに食いしばりや歯ぎしりをしている方が増えています。これをTCH(Tooth Contacting Habit=歯牙接触癖:しがせっしょくへき)と呼びます。昔からの癖だったり、ストレスだったり、原因はさまざまです。元来、安静にしている人間の上下の歯は接触しておらず、食事や会話の時だけ接触します。1日のうちで上下の歯が接触している時間は、合計しても20分足らずといわれています。TCHのある方は、TCHのない方と比べると顎関節に長時間負担がかかっているため、顎関節症に発展する恐れがあります。とりわけ、顎関節症I型・II型は食いしばりや歯ぎしりが原因のケースが大多数を占めますので、TCHの改善が重要です。この記事を読みながら歯を食いしばっていませんか?歯を食いしばっていたら要注意です。あごを緩めてリラックスするように心がけてください。
また、頬づえをついたり、電話の受話器を肩とあごで挟んだり、ガムをかみ続けたりすることも、あごへの負担となります。抜歯して歯がなくなったまま、入れ歯やブリッジを入れずに放置していませんか?歯を失うとその場所から歯並びが崩れ始め、かみ合わせがおかしくなってあごへの負担が増え、顎関節症を発症する場合もあります。
顎関節症はさまざまな要因の積み重ねで生じる疾患です。当てはまる個所があったらできるだけ治し、顎関節症を予防するように心がけましょう。
参考
1 新編 チャートでわかる顎関節症の診断と治療 (依田哲也著/医歯薬出版)
2 TCHのコントロールで治す顎関節症 (木野孔司編著/医歯薬出版)
解説:馬場 隼一
横浜市南部病院
歯科口腔外科
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