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2018.07.11
病的なまでに気分が高揚して、開放的になったり怒りっぽくなったりした状態のことです。尊大な振る舞いをする、延々しゃべり続ける、考えが次々飛躍する、注意が散漫になる、活発に活動し寝なくても平気なほどになる、焦燥感が目立つ、といった様子もみられ、ギャンブルや買い物などの浪費が盛んになるといった問題行動を伴うこともあります。症状はあるものの、社会的機能に著しく障害をきたすほどでない場合は軽躁状態といいます。
多くの場合、うつ状態と躁状態とが交代でみられる双極性障害(躁うつ病)の病状の一つとして現れます。他者に攻撃的となることもあり、周囲への影響も大きいものです。本人にとっても単純に気分爽快というわけではなく、情動の不安定さがかなり目立つので、早めに精神科などの専門家に相談し、治療につなぐ必要があります。
時には、身体疾患や薬物の影響によって躁状態に見えることがあります。身体的な要因としては、甲状腺疾患やクッシング症候群といった内分泌疾患、脳炎・神経変性疾患といった中枢神経系疾患、ステロイド薬といった医薬品、または違法薬物などがあります。これらの場合は、精神疾患としての治療というよりも、個々の身体的な要因に対する治療や対処が必要です。
双極性障害で躁状態に至っても、病気の初めから躁状態をきたすとは限りません。意欲がない、気分が落ち込む、といった「うつ状態」から始まり、後に躁状態の時期が出現する、というパターンのほうが典型的です。そのため、「うつ病」として治療を始めたものの、後に躁状態が出現し診断が「双極性障害」に変更になるというケースも珍しくありません。”うつ”っぽく見える、あるいは、”うつ”としての治療を続けている人に、やけに活気が出てきた、イライラや焦燥感が目立つようになってきた、といった変化がみられたら、躁状態を疑って、専門家・かかりつけ医に早めに相談する必要があります。
また、「医学解説」に挙げたような甲状腺疾患などの身体的な要因がある人に同様の様子がみられてきた場合は、各診療科の担当医に早めに相談するのがよいでしょう。薬剤性のものでは、さまざまな疾患に用いられているステロイド薬で躁状態が引き起こされることがあります。この種の薬剤で治療を始めた直後から精神面で不安定になってきたら、薬剤の影響も疑い、担当医に相談しましょう。
どのような人がなりやすいか、といった予測は困難ですが、躁状態をきたしたことのある人に関しては、再燃の予防に取り組むことができます。
双極性障害の人は、予防のために薬物療法を継続する必要がありますが、治療を自己中断し再燃してしまう人も珍しくはありません。薬物療法について、副作用・その他で何かしら疑問をお持ちの場合は、遠慮せず率直に担当医に相談してみましょう。
身体的な要因や薬剤が原因となっていた場合は、精神面の副作用も考慮しながら身体疾患の治療を継続することで、躁的な状態の再発予防にもなります。
解説:古野 拓
済生会横浜市南部病院
精神科部長
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